医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-28:骨髄増殖性腫瘍の遺伝子解析と変異遺伝子の機能解析研究代表者:北中 明(検査診断学(病態解析)) 骨髄増殖性腫瘍(MPN)の病態解析として、臨床検体の遺伝子解析と、疾患モデルを用いた変異calreticulin(CALR)の機能解析を実施した。 臨床検体を用いた検討として、平成29年度に、67例のMPN(PV7例、ET 51例、MF3例、その他6例)を対象に遺伝子解析を行い、全症例の72%にJAK2V617F変異が、16%にCALR変異が認められた。CALR変異は、ETの18% 、MFの33%に検出された。 変異CALRの機能解析として昨年度までに、巨核球系分化を観察可能な細胞株(F36P-MPL)にヒトと相同的なCALR変異を導入した。F36P-MPLの親株は増殖にサイトカインを必要とするが、変異CALRの導入によってサイトカイン依存性は消失した。サイトカインを除去すると親株ではMPL下流のシグナル分子であるSTAT5のチロシンリン酸化が消失するのに対し、変異CALR発現細胞では、一旦減弱したチロシンリン酸化が再出現した。このことは変異CALRがトロンボポエチン結合に類似したシグナルを生ずることを示している。ETを発症するヒトCALR変異を発現したトランスジェニックマウスにおいてJAK2阻害剤はin vivoでMPNの病勢を軽快させるが、変異CALR導入F36P-MPL細胞を用いることによって、MPNに対するin vitroでの薬剤探索が可能となった。29基-30:骨髄増殖性腫瘍における病因遺伝子変異解析と病態の解明研究代表者:近藤 敏範(血液内科学)【背景】骨髄増殖性腫瘍(Myeloproliferative neoplasms : MPN)における好中球アルカリフォスファターゼスコア(NAP score)は一般的に真性赤血球増加症や原発性骨髄線維症では高値、慢性期慢性骨髄性白血病では低値とされている。我々はCALR変異を有するMPN症例ではNAP scoreが正常から低値であることを報告した。今回、フローサイトメトリー法(FCM)を用いてMPN症例の好中球膜アルカリフォスファターゼ発現レベル(sNAP)とNAP scoreおよび遺伝子変異との関連性について検討した。【対象と方法】当院へ通院中のMPN症例を対象に、末梢血白血球をFITC標識抗アルカリフォスタファーゼ抗体とPE標識抗CD11b抗体で二重染色し、CD11b高発現集団におけるFITCのMFIをsNAPと定義して解析した。【結果】解析症例は35例、年齢中央値は72歳(45-88歳)、JAK2変異例26例、CALR変異例9例であった。NAP scoreとsNAPには有意な中等度の相関関係を認めた(P<0.001, ρ=0.629)。JAK2変異群とCALR変異群のsNAP平均値には有意差を認めた(42.37 vs 13.65, P=0.001)。【結語】遺伝子変異の違いがsNAPに影響していた。現在、CALR変異群におけるsNAP発現低下の機序について検討中である。S48川 崎 医 学 会 誌

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