医学会誌44-補遺号[S30]
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29基-107: 経皮的冠動脈形成術中の急性ステント血栓症に対する自動灌流型バルーンカテーテルの有効性に関する研究研究代表者:奥津 匡暁(総合内科学3)【背景】冠動脈インターベンション治療(PCI)においてステント血栓症は重大心事故につながる場合が多く、中でもPCI術中に発症する急性ステント血栓症は治療抵抗性で血栓増大の抑制を制御することができず、対処に難渋する場合が多い。バルーンの長時間拡張が有効な方法の一つであるが虚血が生じるために拡張時間の制限がある。その問題を解決する器具として自動灌流型バルーンカテーテル(PB)による長時間拡張を考案した。【方法】PCI後にステント血栓症を発症した22例を後ろ向きに検討した。16例はPB以外の治療(非PB群)を行い、6例はPBを使用(PB群)した。両群で最終的にステント内血栓の増大の停止獲得の有無、PCI治療内容、CABGの施行の有無を比較検討した。【結果】PB群対非PB群でステント内血栓の増大の停止、IABPの使用、CABGの施行、ステント血栓症発症後手技時間はそれぞれ100%vs81%、17%vs94%、0%vs44%、0%vs25%、17%vs38%、0%vs19%、80分vs137分といずれもPB群で良好であった。1回のバルーン拡張時間は141秒vs37秒とPB群で長かった。【結語】急性ステント血栓症におけるPBの使用は有効な解決方法の一つであることが示唆された。29基-20: 色素量の定量によるヒト網膜色素上皮細胞移植の最適化研究代表者:桐生 純一(眼科学1)【目的】加齢黄斑変性(AMD)に対する根治治療として網膜色素上皮(RPE)移植が期待されているが、移植に最適な細胞の状態が不明であるという問題がある。一方で、我々はこれまでにRPEの細胞成熟度と相関する細胞の色素量を定量化することに成功している。そこで本研究はRPEの色素量ごとに細胞機能を評価することで、AMDに対する移植に最適な色素量を検討することを目的として行った。【方法】胎児RPEの透過率から色素量を定量し、低色素群(white群)と高色素群(black群)の2群に分けた。評価方法は、各群での細胞生存率、細胞接着、細胞機能(RPE特有遺伝子の発現量:RPE65、RLBP1、VMD2、MERTK)とした。細胞生存率は凍結保存1か月後の生細胞の割合で評価し、細胞接着は播種翌日の接着細胞数をLuminance assayを用いて測定した。細胞機能は、同一培養皿のRPEをSingle cell PCR、異なる培養期間におけるRPEをreal time PCRを測定した。【結果】細胞生存率は、white群で92.9%、black群で85.9%と有意差は認めなった。細胞接着は、蛍光強度がwhite群で19471、black群で650と有意にwhite群が高かった。細胞機能は、同一培養皿のRPEにおけるRPE特有遺伝子は全てblack群で高値だったが、異なる培養期間におけるRPEでは、RPE特有遺伝子のうち貪食能を司るMERTKの発現がblack群で低下していた。【結論】black群において細胞接着率と貪食能を司るMERTKの発現が低下していたため、AMDを対象とするRPE移植の移植細胞としては、色素量の低いRPE細胞が適している可能性が示唆された。S22川 崎 医 学 会 誌

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