医学会誌43-補遺号
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28基-79:抑うつ症状に対するBST-1/CD157の役割の解明研究代表者:西本 高明(免疫学) 関節リウマチ由来骨髄間質細胞表面に高発現され、B細胞の生存を支持する分子Bone marrow stromal cell antigen-1(BST-1)/CD157は、GPIアンカー型細胞膜外酵素でNADからサイクリックADPリボースの産生と加水分解の反応を司る。GWASによりBST1のSNPがパーキンソン病(PD)の危険因子であることが報告された。東田陽博博士らとの共同研究では、BST-1欠損マウス(Bst1-KO)に振戦・歩行障害等のPD典型的運動障害やPD誘発実験での感受性亢進は認められず、強制水泳試験(FST)における無動時間の増加、即ち、抑うつ症状亢進が認められた。PDの運動障害発症前に出現する非運動性障害の形成にBST-1の関連が示唆され、Bst1-KOは抑鬱に対する治療効果の評価に有用であることが示された。 今回、FSTにおいて、MAO-B阻害PD治療薬セレギリン(10 mg/kg)を投与したところ、野生型対照と比較して延長していたBst1-KOの無動時間は正常化した。無投薬FST後のBst1-KOの脳では、線条体と海馬におけるセロトニン、皮質におけるノルエピネフリン、血漿コルチコステロンが低下していたのに対し、セレギリン(10 mg/kg)1回投与FST群では、それらは正常化した。Bst1-KOにおいて視床下部-下垂体-副腎軸の異常の存在することが明らかとなった。28基-67: BST-1/CD157のI型胸腺非依存性抗原応答抑制機構の解析研究代表者:石原 克彦(免疫学) Bone marrow stromal cell antigen-1 (BST-1)/CD157はADPリボシルシクラーゼ活性を有するGPIアンカー型細胞膜外酵素である。我々はこれまでC57BL/6(B6)背景のBst1遺伝子欠損マウス(Bst1-KO)をI型胸腺非依存性抗原であるTNP-LPSで免疫した際にTNP特異的抗体産生が亢進していることを発見した。今回、その分子機構解析の第一段階としてB細胞亜集団の解析を 行った。 フローサイトメトリーによる表面発現解析の結果、BST-1は脾臓B細胞の亜集団であるtransitional type 2 (T2) B細胞と辺縁帯(marginal zone; MZ) B細胞に発現しており、濾胞B細胞にはほとんど発現していなかった。Bst1-KOおよび対照B6の脾臓から磁気ビーズ法によりナイーブB細胞を精製し様々な刺激に対する増殖反応を測定したところBst1-KO由来B細胞はLPSおよびCpG DNA刺激に対する反応が特異的に亢進していた。LPS等のTLRリガンドに対する刺激に反応する亜集団として知られるMZ B・T2 B細胞においてBST-1はTLRシグナルを抑制する新たな自然免疫制御因子として機能している可能性が示唆された。今後はMZ B・T2 B細胞等のB細胞亜集団をFACSソーティングによって精製し、より詳細な機能解析を行う予定である。S72川 崎 医 学 会 誌

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