医学会誌43-補遺号
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28基-11:間質性肺疾患の免疫関連細胞における免疫チェックポイント分子の発現解析研究代表者:毛利 圭二(呼吸器内科学) 近年の腫瘍免疫学分野の発展により腫瘍局所における抗腫瘍免疫の抑制因子が明らかとなり、これらの免疫抑制因子を標的とした分子標的薬や抗体医薬を用いて免疫抑制因子を排除もしくは阻害することによってT細胞機能を回復させ、抗腫瘍免疫を強化することが可能となった。 その中でも免疫チェックポイント分子であるPD-1/PD-L1経路を阻害したがん免疫抗体療法は、進行期肺癌治療において奏効率は未だ十分ではないが、生存期間の延長が認められるなど画期的な効果をもたらした。しかしながら、抗PD-1/PD-L1抗体を用いた患者では、合併症として間質性肺炎が出現し、その発現予測と克服が課題となっている。 悪性黒色腫における抗PD-1抗体のphaseⅡ 試験では、35例のうち1例に間質性肺炎が合併し、非小細胞肺癌では296例のうち9例と高頻度に間質性肺炎の合併を認めた。 一方、免疫学的解析の進歩にともない免疫担当細胞、特にリンパ球に関しては新規サブセットが同定され、呼吸器疾患においても各細胞の機能解析が、積極的に進められている。またこれまで多くは原因不明であった間質性肺疾患に関しても、その病態形成において宿主の免疫応答の関与が示唆されている。 本研究では、当院で病理学的に間質性肺炎と診断された129例(器質化肺炎84例、非特異性間質性肺炎23例、好酸球性肺炎14例、通常型間質性肺炎8例)における免疫チェックポイント分子の発現の多寡および局所浸潤リンパ球の多寡を免疫染色法で検討する。 本年は、対象患者の検索および、免疫チェックポイント分子の免疫染色法の条件検討を行った。本研究を継続することで、間質性肺炎の新たな機序の解明の一助になる可能性がある。 28基-34: M. fermentans感染によって発症促進されるマウス関節リウマチモデルにおける獲得免疫関与の検討研究代表者:矢作 綾野(免疫学) Mycoplasma fermentans(Mf)は関節リウマチ(RA)患者の関節液、関節滑膜組織、末梢血液中に検出され、RA発症との関連が示唆される微生物の一つである。我々はIL-6ファミリーサイトカインの受容体gp130の点変異によりRA様自己免疫性関節炎を自然発症するノックインマウスgp130F759の未発症期にMfを経静脈的に感染させると非感染群に比べ関節炎発症が早期化し、感染1ヶ月後には滑膜組織における免疫系細胞(好中球、B細胞、T細胞)が増加し、滑膜の増生が進行することを見出だした。感染によるRA様関節炎発症促進モデルとしての発症責任細胞の検証を目的として、感染早期に増加する好中球を中和抗体で除去すると関節炎の発症を抑制できたことから自然免疫の関与を確認している。今回は、獲得免疫の関与を検討した。感染1ヶ月後のgp130F759(n=5)から血清と滑膜あるいは脾臓から細胞を調製し、非感染3ヶ月齢のgp130F759へ静脈移入(各n=2)し、関節炎が誘導されるか確認した。その結果、滑膜細胞、脾臓細胞、血清を移入したマウスは、それぞれ移入の10、18、22日後に関節炎惹起が認められた。Mf感染によって発症が促進されるRA様関節炎において、獲得免疫系の関与が示唆された。現在、マウス数を増やし同様の検証を行っている。S71

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