医学会誌43-補遺号
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28基-17:肺炎クラミジア特異的新規エフェクター分子の機能解析研究代表者:簗取 いずみ(分子生物学) 偏性細胞内寄生性細菌の一つである肺炎クラミジアは、宿主細胞に感染後、宿主細胞の小胞輸送や小器官維持に必要な分子に作用し、増殖に必要な栄養源・細胞膜構成成分等を宿主から効率的に輸送する機構をもつ。これまで当研究室にて行った複数のスクリーニングにて陽性を示す分子について、その詳細な機能解析を行った。エフェクター候補分子の一つであるEf01に対する特異的抗体を作製し、肺炎クラミジアJ138株感染細胞にてEf01の発現動態を解析した。Ef01は、感染後24-66時間にのみ発現を認めた。クラミジアは特殊な生活環をもっており、基本小体で感染し、網様体で増殖する。蛋白質の発現解析の結果、Ef01は網様体(増殖期)にのみ発現していると推測され る。また、Ef01に結合するヒト蛋白質のスクリーニングを行ったところ、Ef01はHuntingtin interacting protein 14 (HIP14)と結合することを見出した。さらに、in vitro GST pull-down法および、in vivo 共免疫沈降法を用い実験においても互いの結合が証明できた。HIP14は、ゴルジに存在して膜の脂質をパルミトイル化することで、小胞輸送に関与する。菌体の増殖期間にEf01がHIP14に作用することで、膜輸送に影響を及ぼすことが予測された。28基-54:宿主細胞内分泌タンパク質を介した肺炎クラミジア感染戦略の解明研究代表者:今田 潔(分子生物学) 偏性細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジアは、宿主細胞内でのみ生存可能であり、多数のエフェクターを宿主細胞内に分泌していると考えられている。我々は、肺炎クラミジア機能未知遺伝子403個について、クラミジアトラコマティス形質転換技術およびGlycogen synthase kinase(GSK)タグを利用した肺炎クラミジアエフェクター分子の網羅的スクリーニングを行い、エフェクター分子の同定を行うことを目的として研究を行った。GSKはヒト細胞質ゾル内でリン酸化修飾を受けるという特性を持つことから、クラミジア菌体から宿主細胞内に移行してリン酸化されたGSKタグを検出することにより、エフェクター分子を迅速に同定することができる。そこで、GSKタグを付加した肺炎クラミジア機能未知遺伝子381個を導入したクラミジアトラコマティス形質転換体を作製し、発現ライブラリーを構築した。形質転換体をHEp-2細胞に感染させ、細胞溶解液を用い て、ウェスタンブロットによってGSKタグおよびリン酸化GSKタグを検出した。その結果、381クローンのうち348クローンにおいてGSKタグが検出された。これらのクローンのうち、68クローンにおいてリン酸化が確認され、新規の肺炎クラミジアエフェクター分子を見出すことに成功した。S67

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