医学会誌43-補遺号
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28基-58:ボルテゾミブによるHLA抗体産生抑制効果の検討 研究代表者:松橋 佳子(血液内科学) 同種造血細胞移植においてレシピエントのHLA抗体、特にドナー抗原特異抗体(Donor Specific Antibody; DSA)の存在はドナー幹細胞の生着に重大な影響を与える。HLA抗体の減量処置にはリツキシマブ、ボルテゾミブ(Bortezomib; BOR)等が報告されているが、造血細胞移植患者におけるBORのHLA抗体産生抑制効果の報告は殆どない。我々は造血細胞移植前にBORを使用したHLA抗体陽性患者のHLA抗体価を追跡した。HLA抗体検査は外注検査にてLuminex法を用い、各抗体のMFI(蛍光値)を経時的に測定した。症例1:BOR1コース後に各DSAは前値の50-95%に、2コース後に21-83%に一部減弱したが、DR座に対するDSAが著明高値に留まった。症例2: BOR 1コース後に各DSAは前値の47-71%に一部減弱したが、B座に対するDSAが著明高値に留まった。同一患者においても各DSAの減少率は一様でなく、BOR1-2コースの単独投与では効果不十分な可能性がある。なお、同じ検査法で移植前にHLA抗体検査を行った当科の血液疾患患者(n=113)の集計では、HLA抗体陽性率は男性患者(n=70)で24.3%、非経産女性患者(n=10)で30.0%に対し、経産女性患者(n=33)では51.5%と高率であった。経産女性患者に重点を置き、症例を蓄積し検討を重ねる。28基-23:ガレクチン9を用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法の作用機序に関する研究研究代表者:清水 大樹(呼吸器内科学)【目的】我々はこれまでにマウス慢性気管支喘息モデルを作成し、ガレクチン9 (Gal-9)を用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法の有効性を見いだした。本研究は、新規アレルゲン特異的舌下免疫療法におけるGal-9の作用機序の解明を目的とする。【方法】1.ダニ抗原誘発マウス慢性気管支喘息モデルに対してGal-9を用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法を行い、組織学的また免疫学的に比較検討する。①気道のリモデリング(基底膜肥厚)改善 ②BAL液中のTGF-β陽性制御性T細胞 (Treg : Foxp3+TGF-β1+)数を評価する。2.ダニ抗原誘発マウス慢性気管支喘息モデルの培養脾臓細胞へのGal-9刺激による③TGF-β陽性制御性T細胞 (Treg : Foxp3+TGF-β1+)の誘導と④ラクトースを用いたGal-9の効果抑制判定を行う。【結果】Gal-9を用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法では、①気道リモデリングの抑制効果は認められなかった。②BAL液中にはTGF-β陽性制御性T細胞 (Treg : Foxp3+TGF-β1+)の増加が認められた。 培養脾臓細胞のGal-9刺激では、③TGF-β陽性制御性T細胞 (Treg : Foxp3+TGF-β1+)の増加が認められた。④ラクトース添加によりGal-9の効果が抑制された。【考察】Gal-9を用いた新規アレルゲン特異的舌下免疫療法の作用機序はTGF-β産生Tregの関与がその効果作用機序において重要であると考えられる。また、気道のリモデリングの抑制については十分な効果が得られておらず更なる検討が必要であると考えられる。S61

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