医学会誌43-補遺号
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28基-41: 骨髄異形成症候群から急性白血病へ移行する分子機構の探索~患者骨髄細胞から各段階の細胞株におけるゲノム解析からの検討研究代表者:通山 薫(検査診断学(病態解析)) 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes;MDS)は急性骨髄性白血病に移行しやすい造血障害であるが、発症と病型移行の分子機構には未解明の点が多い。本研究の契機となったMDS患者由来細胞株MDS92を継代中に、あらたな8つの亜株を樹立することができた。MDS92とその亜株は、MDSから急性白血病への流れをインビトロで再現した培養細胞モデルのラインアップである。これらの細胞株と、発端となったMDS患者骨髄細胞を用いた全エクソームの比較解析によって、病型進展に関わる遺伝子変異を探索し、MDSの病型移行・病態悪化の分子機構の一端を解明 し、それを防止する新しい治療戦略への道を開くことが本研究の目的であり、継続的に取り組んできた。 これまでの解析の結果、N-RAS変異、CEBPA変異は培養途上で出現し、各細胞株に受け継がれていることがわかった。またMDS92からMDS-Lへ移行する段階でHistone1H3C 変異(K27M)が検出された。この変異は小児脳幹腫瘍で報告がありJMJD3阻害薬が有効とされているが、MDS-Lへの抑制効果は明確でなかった。一方MDS-LはIL-3依存性に増殖するが、IL-3非存在下で分離されたMDS-LGFには上記Histone1H3C 変異が見られなかった。同変異の獲得とIL-3依存性増殖との関連を検討中である。28基-103: 骨髄異形成症候群におけるDNAメチル化阻害薬の作用機序の解明研究代表者:辻岡 貴之 (検査診断学(病態解析))【目的】DNAメチル化阻害薬は骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬として、近年注目されている が、作用機序に不明な点が多いためin vitroの系を用いて検討した。【材料と方法】MDS細胞株MDS-L、MDS92と白血病細胞株HL-60、U937、K562を37℃、CO2 5%の条件下で培養した。DNAメチル化阻害薬(decitabine;DAC、azacitidine:AZA)を0-10 microMで連日処理した。【結果】5つの細胞株の中で、特にMDS-L、MDS92、HL-60で強い増殖抑制がみられ(DAC:IC50 はMDS-L: 16.0±0.49nM、MDS92: 74.3 ±12.6nM、 HL-60: 145.0 ±6.1nM)、アポトーシスによる細胞死が確認された。細胞周期の解析では、MDS-LをDACで処理したとき、濃度依存性にG2/M期の細胞が増加した。DNAマイクロアレイと全ゲノムを対象とした網羅的メチル化解析を行いDACの作用機序に関わると予想される13個の遺伝子を抽出し特に、cholesterol 25-hydroxylase(CH25H)に注目した。定量PCRを用いてCH25Hの発現量を確認したところ、5つの細胞株でDAC処理により発現の上昇を認めた。MDS-L、HL-60を用いたCH25Hプロモーター領域のメチル化解析では骨髄健常人CD34陽性細胞と比較して顕著なメチル化を認めた。【考察】 現在、MDS・白血病患者骨髄検体を用いて細胞株の結果を検証中である。S59

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