医学会誌43-補遺号
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28基-43:バレット食道におけるバレット腺癌リスクマーカーの検討研究代表者:村尾 高久(消化管内科学)【背景】バレット食道(BE)の中でも3 cm 以上のLSBEが3 cm に満たないSSBEと比較して、食道腺癌(EAC)のハイリスクとされているが、臨床上有用なバイオマーカーは見出されていない。我々は以前に米国人のBEより採取した検体で、SERPINB7の過剰発現がBEの伸展やEAC発症におけるバイオマーカーとして有用である可能性を報告した。【目的】日本人BEのブラッシング検体を用いて、LSBEおよびEAC発症に関連するバイオマーカーを同定する。【方法】EACの背景粘膜からブラッシングにて検体を採取し、同様に年齢、性別を合致させたコントロール群からも検体を採取。マイクロアレイ解析を行い、候補遺伝子同定のため、Real time PCRを実施した。【結果】対象はEAC13例、コントロール群LSBE17例、SSBE54例。LSBE群でSSBE群と比較してSCNN1Bが有意に低発現、TRHDE、SERPINB7は有意に高発現を認めた。3群比較においてSCNN1BはSSBE群でLSBE群およびEAC群と比較して有意に低発現で、SERPINB7はSSBE群でLSBE群と比較して有意に高発現を認めた。コントロール群とEAC群の2群間のBE粘膜の遺伝子発現に有意差を認めなかった。【結論】 LSBE患者におけるSCNN1Bの発現低下およびSERPINB7の過剰発現が米国人同様、日本人のLSBEにおいても認められた。28基-22:エイコサペンタエン酸とシスプラチン併用による食道癌細胞の走化性抑制効果の検討 研究代表者:窪田 寿子(消化器外科学) エイコサペンタエン酸(EPA)はがん細胞増殖抑制作用・抗炎症作用を持つことが示唆されている。われわれは以前EPAが食道癌細胞株に対してアポトーシス誘導および細胞増殖抑制作用を有することを報告した。食道がん治療において、患者の高齢化等、栄養療法の重要性が増している。この背景を踏まえてEPAと化学療法の併用効果を検討するために、食道癌細胞の細胞増殖率、 また、炎症・細胞増殖に深いかかわりを持つNF-κBの核内移行、培養上清中IL-6量に対する併用効果の有無を検証した。細胞増殖率について、EPAとCDDPの併用では48時間添加の場合、EPAのみでは94.6~100%の細胞増殖率であったが、CDDP5μg/mlを併用した場合、EPA0μM時を100%として、EPA100μM時81.3%、EPA200μM時55.5%とEPAの濃度依存的に細胞増殖を抑制していた。 NF-κB核内移行率はCDDP単独では0、0.1、1、10μg/mlの順に31.3%、20.7%、10.0%、3.1%に抑制していた。EPA単独では0, 100μM添加時に31.3%、17.7%に抑制されていた。EPAとCDDPを併用した場合、EPAの濃度依存的に増殖を抑制していた。(EPA100μM/ CDDP 0.1μg/ml ・14.4%、EPA100μM/ CDDP 1μg/ml・ 6.2%) 培養上清中IL-6量測定において、EPA単独の場合51.2~58.5%に減少し、CDDP単独の場合は131.7~263.7%に増加した。EPAとCDDPを併用した場合、EPA200μM時に43.7~68.0%へと減少した。以上よりEPAはTE-1細胞においてCDDPの腫瘍増殖抑制効果を相乗的に抑制した。また、NF-κB核内移行、培養上清中IL-6量をEPAの濃度依存的に抑制していた。走化性は現在検討中である。S54川 崎 医 学 会 誌

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