医学会誌43-補遺号
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28基-57:婦人科悪性腫瘍の移植ヌードマウスの確立研究代表者:潮田 至央(産婦人科学1)【緒言】悪性腫瘍を人体外で増殖させることは必ずしも可能ではない。ヌードマウスに移植するなどの方法で癌を人体外で増殖させることが可能になれば、その患者さんの癌の治療薬や放射線治療の感受性を解析することが可能になる道が開け、個別化治療の確立にむけた重要な技術となる。婦人科癌をヌードマウス体内で増殖させ、抗がん剤治療感受性をその投与前に調べ個別化治療を行うことを目標として、我々は、婦人科悪性腫瘍の手術検体をヌードマウスの皮下に移植する研究を行った。【方法】手術検体の癌組織をヌードマウス皮下に移植(異所移植)し、腫瘍が生着し増殖するかどうかを観察した。平成28年9月から平成29年4月までの婦人科悪性腫瘍の手術12例のうち6例において手術検体の癌組織をヌードマウスの皮下に移植した。移植の時期は、2016年8月2日、同年9月6日、2017年1月26日、同年3月23日、同年3月28日、同年4月21日であった。【結果】2017年5月時点で、それぞれ2017年1月26日、同年3月23日、同年3月28日、同年4月21日に移植した4例で腫瘍が生着していた。【考察】生着し増殖する癌と生着しない癌との違いの原因は不明である。生着し増殖する癌の事例を集積し、生着しない癌との比較を行い、その原因を明らかにすることは、生着率の向上につながり、治療感受性を治療前に判定する個別化治療につながると考えられる。28基-72: 遺伝子改変発癌マウスを用いたp53遺伝子欠損腫瘍の浸潤進展機構の解析研究代表者:中村 隆文(産婦人科学1)【目的】p53遺伝子がマクロファージの機能を制御して腫瘍の増殖進展に関与しているかを解析す る。【方法】1)p53欠損発癌マウスを作製するため、SV40T抗原を水晶体上皮に発現させて、上皮性未分化癌を発症するαT3マウスとp53欠損マウスを交配させ、Tail DNAを抽出してPCR法でp53遺伝子が欠損しかつSV40 T抗原を発現するp53欠損αT3マウスを選択する。2)αT3マウスとp53欠損αT3マウスを用いて、上皮内癌から浸潤癌に進行する生後16-20週のマウスを病理解剖して浸潤癌への進行割合をHE染色にて比較検討する。3)p53遺伝子がマクロファージの腫瘍免疫の機能に影響しているかを解析するためにp53欠損マウス、αT3マウスとp53欠損αT3マウスの腹腔内マクロファージを採取しフローサイトメトリーを用いてマクロファージのIDO発現を比較検討する。【結果】1)p53欠損αT3マウスはαT3マウスより腫瘍の浸潤進展が有意に増悪した。 2)p53欠損αT3マウスはαT3マウスより腹腔内マクロファージのIDO発現が増加していることが判明した。3)p53欠損マウスの腹腔内マクロファージの解析ではIDO発現マクロファージの増加は見られなかった。4)正常マウスの腹腔内にp53欠損αT3マウス腫瘍の培養細胞を注入すると腹腔内マクロファージが増加し、さらにIDO発現マクロファージの増加も見られた。【結論】p53欠損腫瘍細胞がIDOを発現するマクロファージを誘導して腫瘍免疫を抑制している可能性が示唆された。S52川 崎 医 学 会 誌

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