医学会誌43-補遺号
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28基-35: 糖尿病モデルマウスにおけるSGLT2阻害薬のアルブミン尿抑制、およびレニン/ 組織レニン・アンジオテンシン系抑制効果の検討研究代表者:庵谷 千恵子(総合臨床医学)【背景】糖尿病性腎症の早期からみられる糸球体内圧の上昇、過剰濾過は腎症進展に深く関与しており、SGLT2阻害薬は糸球体尿細管フィードバック(TGF)機構を介した糸球体過剰濾過の抑制により腎症進展抑制を示すと考えられている。In vivo imaging技術を用い、SGLT2阻害薬Empagliflizon (Empa)のTGFに対する効果の検討を行った。【方法】C57BL/6マウス、インスリン分泌不全型糖尿病モデルマウス(Akita)を用いた。AkitaマウスにVehicle群、Empa (5mg/kg) 群、インスリン(0.1U/body)群を作成し、投薬4週間後の検体・組織を解析した。また各群投薬1週間後の糸球体径およびSingle Nephron GFR(SNGFR)の変化を、二光子レーザー顕微鏡を用いて評価した。【結果】Vehicle群では有意なアルブミン尿出現、糸球体内活性酸素産生増強、NO低下を認めた が、Empa群では是正された。いずれの改善効果もインスリン群と同等か、より顕著な効果を認 めた。Akita+Vehicle群のSNGFRはC57BL/6群より有意に上昇しており、Empa投与により糸球体過剰濾過は是正された。固定腎組織を用いた輸入細動脈径の評価において、Empa群はVehicle群と比較し有意に動脈径の拡張を抑制していた。糸球体径もEmpa投与により有意に抑制されて いた。【結語】Empaの糖尿病におけるアルブミン尿抑制効果、糸球体保護効果は、糸球体過剰濾過の抑制によるものであることが示唆された。28基-37: 関節炎による局所の炎症は腎内Renin-Angiotensin経路活性化を介して塩分感受性高血圧をきたす。研究代表者:春名 克祐(腎臓・高血圧内科学)【背景】JMS-Cohort Studyで示されているように高感度CRPは高血圧発症のリスクであり、炎症が高血圧の誘因となることが報告されている。炎症生疾患である関節リウマチ患者においても、その30-40%が降圧療法を受けている。我々は以前よりリウマチ患者における内皮機能障害について検討を続けている。しかし、高血圧との関連については検討されておらず「関節炎に伴う慢性炎症は腎内Renin-Angiotensin経路活性化を介して塩分感受性高血圧形成に寄与する」との仮説をたて研究を行った。【方法】Lewis rat(male 6-8週齢)を使用し、Adjuvantを投与しAIAラット(AIA)、を作成し た。①関節炎発症後に低塩食(LS)および高塩食(HS)を4週間与え血圧に対する影響を評価し た。血圧はテレメトリー法により測定している。食事変更後、4週間で屠殺組織を検討。②AIA作成後、4週間後に関節炎が改善したのを確認し、食事変更を行った。①同様に血圧、組織の検討を行った。【結果】①Con-HSに比較し、AIA-HSでは血圧上昇を有意に認めた。腎組織学的検討では糸球体障害、尿細管障害ともに認めなかったが、AIA-HSはCon-HS比較し腎組織におけるACE、AT1 receptorなどのmRNA発現が有意に上昇していた。しかし、血清Aldosteroneやレニン活性はLSに比較しHSで低下していたがAIAとConでは差を認めなかった。②関節炎消失を確認後、食事変更し血圧評価を行ったがやはりAIA-HSでCon-HSに比較し血圧上昇を認めた。【結論】関節炎による局所の炎症が腎内RAS活性化を介し塩分感受性亢進に寄与した。また、この影響は関節炎消失後も遷延し、組織障害とは独立した機序が考えられる。S43

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