医学会誌43-補遺号
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28基-3: 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態にかかわる肝内マクロファージ機能異常の検討 研究代表者:川中 美和(総合内科学2) NAFLDにおけるsCD163はNASHの炎症、線維化を反映し、NAFLDの中でも予後の悪いNASHを見つけるバイオマーカーとなる可能性があることを検討してきた。今回、マクロファージのマーカーであるCD68やマクロファージ中でも抗炎症作用や組織修復作用のあるM2マクロファージであるsolubleCD163(sCD163)、CD204の免疫染色を行い、血液中のマクロファージだけではなく、肝組織内でのマクロファージの異常が起こっているか否かについて検討を行った。【対象方法】当院で肝生検を施行したNAFLDの肝組織に対してsCD163、CD204、CD68の免疫染色を行い、染色の有無や部位について検討した。また、肝組織中と血清中のsCD163と比較検討 した。【結果】肝組織内ではsCD163やCD204は類洞内やクッパー細胞(CD68)と思われる部位に一致して染色されることが明らかとなった。また、血液中のsCD163と肝組織中のsCD163との間に明らかな相関はなかった。【結語】血清sCD163はNASHの肝組織の進展や変化を表すバイオマーカーであるが、血清中だけではなく、これらのマクロファージは肝組織中にも存在し、肝組織の状態を反映することが示唆された。28基-82:肝硬変における糖尿病合併は膵実質のMRI所見に影響を与えるか研究代表者:佐藤 朋宏(放射線医学(画像診断1))【目的】肝硬変は慢性肝疾患の終末像であり、線維化による正常肝構造の破壊と再生結節を特徴とする。糖代謝において肝臓は中枢的役割を担うことより、肝硬変患者では60~80%が耐糖能障害をきたし、10~50%が糖尿病を発症する。本研究は、肝硬変患者での糖尿病の存在が膵実質のMRI所見にどの程度影響するのか、またその特徴的な所見が明確にされることを目的とした。対象と方法:肝硬変患者61症例、そのうち2型糖尿病を合併した肝硬変患者は21例。検討項目は膵前後径、膵分葉化、膵信号強度比、ADC値、主膵管描出、膵脂肪変性、膵造影増強効果とした。【結果】糖尿病合併肝硬変群では、糖尿病非合併群に比べ、膵頭部、膵体部、平均の膵前後径が有意に大きかった(頭部:P=0.024 体部:P=0.04 平均P=0.026)。膵分葉化の程度は、糖尿病合併肝硬変群の平均スコアが糖尿病非合併群に比べ、有意に低かった(P=0.035)。膵信号強度比(SIR)に関しては、脂肪抑制T2WIにて有意差が見られ、糖尿病合併肝硬変群では、糖尿病非合併群に比べ、膵体部、膵尾部のSIRが有意に上昇した(体部p =0.047、尾部p=0.038)。【結論】3T-MRIにおいて、糖尿病を合併した肝硬変症例では、糖尿病合併のない肝硬変患者に比べて、膵のサイズが有意に大きい、分葉化の程度が有意に低い、脂肪抑制T2WIの信号が有意に高いことが検証された。S38川 崎 医 学 会 誌

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