医学会誌43-補遺号
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28基-81:心臓の新たなメカノセンシング機構同定に向けた基礎的研究研究代表者:花島 章(生理学1) 弾性タンパク質コネクチンは心筋や骨格筋サルコメアのZ線からM線までを1分子で繋ぐ生体内最大のタンパク質あり、心臓拡張期や筋弛緩時に受動的張力を発生させ、サルコメアの構造を維持する役割を果たしている。コネクチンの変異は拡張型心筋症の主要因の1つとなっており、その発症メカニズムには、コネクチンが直接的に力学的負荷を受容することから始まるメカノトランスダクションが関与している可能性が考えられる。本研究では、コネクチンの中でも分子バネとして機能する、I帯領域に結合するメカノトランスダクション関連タンパク質の探索を行った。また、コネクチンI帯全体の力学特性制御メカニズムを解析するのに必要な、I帯全体丸ごと発現系の構築に向けて、I帯領域の各部位のクローニングと、その連結に取り組んだ。さらに、コネクチンI帯領域の構造と機能を比較生理学的に解析するために、心筋症の疾患モデルとして用いられているゼブラフィッシュのコネクチンI帯領域の一次構造を決定し、その基本構造はヒトのコネクチンI帯領域と類似しているが、弾性を担う領域の構造は大きく異なっていることを明らかにした(論文掲載済)。今後さらに研究を深化させ、心臓のコネクチンを介した新たなメカノセンシング機構を同定し、心筋症の病態生理の解明につなげたい。28挑-8:近赤外線蛍光顕微鏡を用いた生体内心内・外膜側冠微小血管観察時の蛍光試薬の比較評価研究代表者:矢田 豊隆(生化学)【目的】近赤外光により白色蛍光を発するindocyanin green (ICG)とangiosense(As)の蛍光試薬による生体内心内・外膜側冠微小血管径評価の比較を行う。【方法】ビーグル犬(5匹)を対象に麻酔気管挿管開胸後、腹腔鏡を応用開発した近赤外線蛍光顕微鏡を用いた。蛍光色素は、ICG (MW 774)とAs (MW 70,000)を用いて、左冠動脈前下行枝末梢から、冠動脈内投与した。また、PGI2阻害薬投与下でブラジキニン(Brad)投与時心外膜側微小血管のNOと内皮由来過分極(EDH)の拡張評価を行った。【結果】近赤外線によりICGとAs共に蛍光発光を認め、両者間で心外膜側冠微小血管径の正相関(r=0.99,p<0.01)を認めた。ICGより分子量大で、血中アルブミンとの親和性の高いAs の方が血管径の大きい傾向を認め、ICGは分子量小で、血管外漏出を伴うことがあった。同様に心内膜側微小血管において、良好な画像評価が得られた。Brad投与時には、心外膜側微小血管のNOに感受性大の小動脈(100μm以上)及び、EDHに感受性大の細動脈(100μm未満)共に血管拡張を認 めた。【結論】近赤外線蛍光顕微鏡観察時、Asの方がICGに比べてより鮮明な画像が得られた。同顕微鏡を用いてBrad投与時では、主にNOに作用する心外膜側小動脈とEDHに作用する細動脈が拡張することが明らかとなった。S32川 崎 医 学 会 誌

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