医学会誌43-補遺号
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28挑-7:双胎間輸血症候群の受血児における胎児心機能評価研究代表者:村田 晋(産婦人科学1)【目的】双胎間輸血症候群(以下TTTS)の治療目的に胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(以下FLP)を行った症例のうち、得られた術前術後の超音波検査所見が出生後の受血児心疾患(右室流出路狭窄)の発症予測因子となり得るか検討を行った。【対象】平成28年9月以降、FLPが施行された一絨毛膜二羊膜性双胎の妊婦7例を対象とした。7例に対して術前術後にmyocardial performance index(tei-index)を始め、心機能評価として汎用されている検査項目を受血児で測定した。本検討は川崎医科大学・同附属病院における倫理委員会承認済研究である。【結果】7例中1例で出生後、受血児右室流出路狭窄を発症した症例を認めた。この1例は妊娠21週にTTTS stage4の診断でFLPを施行したが、術前から胎児心拡大、心嚢液貯留を来していた。受血児右室tei-indexの検討では、術前0.93、術後7日目0.89、術後14日目0.84と高値を維持していた。他6例の右室tei-indexは術前0.48~0.74、術後7日目0.3~0.69、術後14日目0.31~0.59であり、6例の印象としては術後tei-indexは術後漸減傾向を示していた。【結論】受血児の右室流出路狭窄はTTTS治療後であっても発生するが、それは受血児の心機能(tei-index)がFLP術前から高値を示している症例に特徴的である可能性がある。今後も症例数を蓄積し検討する。さらに、他の因子に関しても測定・解析し、最終的にどのような因子が右室流出路狭窄発症のマーカーとなり得るか検討する。28基-59: 心不全進行に伴う心筋細胞の微細構造のリモデリングの解析研究代表者:氏原 嘉洋(生理学1) 心臓ポンプ機能は、心筋細胞の律動的な収縮・弛緩によって支えられている。効率的な収縮・弛緩を行うために、形質膜の陥入構造であるT管膜や細胞内Ca2+ストア筋小胞体、収縮装置サルコメアなどの特殊微細構造が心筋細胞内に厳密に配置されている。これらの微細構造は、血圧などの力学負荷の変化に応じてリモデリングするが、不全心筋細胞では微細構造が崩壊しており、これが心不全発症の引き金であると考えられている。これまでに我々は、Ca2+輸送体の強制発現によって心不全進行過程における細胞外へのCa2+排出能の低下を回避することで心機能低下を抑制できることを明らかにした。本研究では、心不全進行過程でのCa2+輸送体の強制発現が微細構造のリモデリングに及ぼす影響を解析した。 薬剤投与によりCa2+輸送体を心筋細胞特異的に強制発現可能なマウスに大動脈縮窄手術を施し心不全を誘導したところ、薬剤を投与しない場合は、手術後16週で細胞は著しく肥大し、収縮率は低下した。このときT管膜の密度と周期性は低下し、サルコメアは細分化され、筋小胞体からのCa2+放出量は減少していた。一方、心不全進行過程でCa2+輸送体を強制発現したところ、手術後16週の時点でも、T管膜やサルコメア構造、筋小胞体からのCa2+放出量は維持されており、細胞の形態や収縮率にも大きな異常は見られなかった。これらの結果は、Ca2+排出能の維持が心筋微細構造の維持に重要であることを示唆している。S31

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