医学会誌43-補遺号
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○抄録の並び順は、原則としてポスター展示の並び順となっております。28基-83:高次脳領域による嗅覚系神経回路の多段階的・時空間的調節に関する三次元構造解析 研究代表者:樋田 一徳(解剖学) 嗅球神経回路における嗅覚情報の調節は、匂い入力、介在ニューロン以外にも、他の高次脳中枢からの遠心性ニューロン投射による調節が示唆されるが、その詳細は不明である。本研究はこれら遠心性投射経路の全貌と詳細の解明を目的としたものである。 嗅球へは、縫線核からのセロトニン、対角帯水平脚(HDB)からのアセチルコリン、青斑核(LC)からのノルアドレナリンの各ニューロンが投射する。最近のセロトニンニューロンの解析を基盤として(Suzuki 2015)、本研究ではHDBからのアセチルコリン投射系について三次元的全体像からシナプス同定を明らかにした(Hamamoto 2017)。解析の過程でHDBには他にparvalbumin(PV)含有及び非含有のGABA系ニューロン群の嗅球への投射の存在が分かり、現在、ステレオロジー法により空間的分布と細胞数について立体学的定量解析を進めている。 LCからのノルアドレナリンニューロンは、免疫染色により特徴的な線維分布様式が明らかとなり、現在、DBH-Cre mouseを導入して単一ニューロン標識を試みている。嗅球にはチロシン代謝系のドーパミン系ニューロンが存在するが、これらとの関係についても解析が進めている。 種の遠心性投射ニューロンについては異なる投射分布様式を示し、今後更に解析を進め、嗅球への遠心性ニューロン投射の詳細と存在意義を明らかにしたい。28ス-4: マウス嗅球におけるドーパミン代謝酵素の局在と合成細胞の形態学的解析研究代表者:堀江 沙和(解剖学) 匂いの情報は、1次中枢である嗅球の糸球体層において、僧帽細胞へと伝えられ、さらに高次中枢へと伝えられる。糸球体の周りには種々の介在ニューロンが存在し、嗅覚情報処理に関与していることが知られている。これらの介在ニューロンには、ドーパミン系の合成酵素であるtyrosin hydroxyrase(TH)を含む細胞が多数存在する。また、嗅球には脳の他の領域から、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン等の複数の遠心性ニューロンの入力も受けていることがわかっている。ドーパミン及びノルアドレナリンを含むカテコールアミンの合成経路は共通して、THによるチロシンのリン酸化が律速段階であり、嗅球内ではTHの存在は明らかになっているが、代謝系の他の酵素の存在や、ドーパミンやノルアドレナリンの生合成がどこで行われているのかは不明であった。そこで、複数のドーパミン系代謝酵素及びノルアドレナリントランスポーター(NET)の抗体を用い、嗅球内およびノルアドレナリンニューロンの起始核である青斑核において、ドーパミン代謝酵素の局在とノルアドレナリンニューロンの局在を形態学的手法を用いて調べた。その結果、嗅球内でドーパミン代謝酵素の局在とNETの局在はほとんど一致しなかった。つまり、嗅球内ではドーパミン系の細胞とノルアドレナリン系の細胞がそれぞれ独立して存在していることが示唆された。― 神経・生殖・循環 ―S24川 崎 医 学 会 誌

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