医学会誌43-補遺号
21/102

研究課題名:非同期式直列演算器に基づいたデジタル補聴器用DSPの低消費電力化研究代表者:近藤 真史(川崎医療福祉大学 医療技術学部臨床工学科) 近年、高齢化社会の進展に伴って、難聴を改善する補聴器のニーズは急速に高まっており、特にデジタル信号処理回路(DSP)を内蔵したデジタル補聴器は広く普及している。しかしながら、デジタル補聴器はその装着形態から搭載可能な電池容量に限界があり、その電池寿命は2~7日程度に留まっているのが現状である。 本研究は上述の背景のもと、DSPにおける回路面積の大部分を占める積和演算器に着目し、その低消費電力化手法を提案する。現在一般的に用いられている積和演算器は、1ビット(桁)単位の加算回路(FA)を網羅的に配置した並列演算器として設計されているが、人間の可聴域が20Hz~20kHz程度と特に低速である点を勘案するとその演算性能は極めて冗長と言える。そこで本研究では、単一のFAのみを用いて逐次的に演算を行う直列演算器を採用することにより大幅な小面積化を図る。その反面、直列演算器を用いて十分な演算性能を得るためには高速なクロック信号を印加する必要があり、これもまた消費電力を増大させる要因となる。この問題については、クロック信号を用いない非同期式回路に基づいた制御手法を導入することにより、クロック信号に起因する消費電力の増大を構造的に抑制する方針を採る。 以上に基づいた積和演算器を設計し、その性能解析を行った結果、従来の並列演算器に比して消費電力を33%、回路面積を86%削減できることを確認した。S17

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る