医学会誌43-補遺号
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研究課題名:地域住民の健康支援を目的とした産学官連携事業:そうじゃ健康応援プロジェクト研究代表者:綾部 誠也(岡山県立大学 情報工学部人間情報工学科) 本事業は、本学が企業と自治体のブリッジ役になり、産学官が連携したものづくりの開発から効果検証までのサイクルを構築し、県内企業の活性化と地域住民のQOL向上に貢献することを目的とする。平成28年度には、221名の中高齢総社市民を対象に健康状態、生活習慣、身体機能などの横断的調査を行った。また、そのうち、41名について、9月から3月までの6ヶ月間にわたる生活習慣指導の講座を行った。さらに、全参加者の6名にウォーキングバイシクルについて実生活でのモニター調査を行った。さらに、基礎的な研究取り組みとして、以下の3つの課題に取り組んだ。①ウォーキングバイシクルの使用性について明らかにするために乗車中と自転車乗車中の注視特性、再認特性、使用感について検討した。その結果、ウォーキングバイシクル乗車中の方が周囲の状況を確認しやすく、再認および使用感のスコアが高いことが示された。②上肢の楕円運動における速度と曲率の関係性について、計測実験と計算機シミュレーションを行った。解析の結果、運動制御における利き手と非利き手の違いの要因の一つとして関節の粘性係数の違いを予想する。③様々な走行条件における左右脚の踏力比較から、旋回時に左右のバランスが崩れ不安定であることが明らかとなった。旋回時の不安定性を改善するため、市販されている三輪車の安定化機構を調査し、リーン機構と前後輪の配置変更が有効であると考えられた。研究課題名:エンドファイト糸状菌を用いた天然活性成分の産生及び変換能研究代表者:前原 昭次(福山大学 薬学部薬学科) 医薬品の多くは天然活性成分あるいはその誘導体であることから、演者らはエンドファイトを利用した天然活性成分の産生及び変換に関する研究を行っている。前述のエンドファイトとは、endo(中)とphyte(植物)の造語で植物の中で生息する微生物のことを指す。これらエンドファイトは宿主植物に害を与えることはなく、環境ストレスや害虫・害獣に対する防御システムの一員として働くことが明らかになっているが、第二次代謝産物を介した植物とエンドファイトの関係については未解明である。また、エンドファイトには細菌や糸状菌、酵母が存在し、そのうち演者は糸状菌を選択し研究を進めている。これまでに、キナアルカロイドを含有するキナCinchona ledgerianaやチャカテキンを含有するチャCamellia sinensis、クルクミンを主成分とするウコンCurcuma longaからエンドファイト糸状菌を分離し、培養実験によって産生能や微生物変換能を明らかにしている。本知見は、天然活性成分の存在下で生活しているエンドファイト糸状菌が宿主植物の含有成分を産生・変換する能力を有することを証明した。【J. Nat. Med., 70(2), 271-275(2016), Chem. Pharm. Bull., 59(8), 1042-1044(2011), Chem. Pharm. Bull, 53(12), 1565-1569(2005)】― セッション2:大学間研究の端緒を開く ―S16川 崎 医 学 会 誌

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