医学会誌42-補遺号
93/102

研究課題名: Developmental roles of the siamois-related gene in a basal actinopterygian: functional and evolutionary implications研究代表者:竹内 雅貴(川崎医療福祉大学 医療技術学部臨床工学科) 初期の胚発生はボディプランを確立する発生段階であり、その分子機構の理解は個体発生における遺伝情報の階層性をひもとく上で非常に重要である。一方、脊椎動物系統は多量の卵黄を獲得し保持様式を変化させた結果、全割/盤割の卵割様式や胚体外組織の有無、原腸形成時の組織配置などを多様化させたと考えられる。つまり個体発生に重要で且つ系統的に多様と、一見、相反する特質を併せ持つ脊椎動物の初期発生がどのような進化過程で獲得されたのかは非常に興味深い。 この問題にアクセスするため、私は、脊椎動物の初期発生多様性を理解する上で重要な系統的位置の生物として、条鰭類系統で最初に分岐した生物であるPolypterusの胚発生を解析している。Polypterusは、“魚”であるにも拘らず、両生類様の全割卵で発生する。しかしながら、Polypterusの発生機構は既知の無尾両生類とは大きく異なり、脊椎動物系統における根幹的発生機構を現在も保持していると考えられる。 本発表では、Polypterusのsiamois関連遺伝子diosについて報告する。両生類の体軸形成において、homeobox転写因子siamoisは重要な役割を果たす。一方、その相同遺伝子や類する活性の遺伝子は、他の分類群で全く見つかっていなかった。diosは、ツメガエル胚への過剰発現において完全二次軸を形成するなどsiamois同様の活性を示すが、両遺伝子の機能阻害表現型は異なる。これは、動物種によって胚発生における役割が異なる事を示唆する。以上から、体軸形成分子機構の脊椎動物における進化について議論したい。研究課題名:医療福祉学科および医療福祉デザイン学科のプロジェクトを通した学び研究代表者:小田桐 早苗(川崎医療福祉大学 医療福祉学部医療福祉学科) 近年、保健医療福祉の実践現場に於いては、医療の高度化・専門職の分化を背景とし、専門知識を有しながら他の専門職について理解し、チームとして問題解決できる能力を養い、諸問題に対処できる人材育成が求められている。本研究において医療福祉学科、医療福祉デザイン学科の学生との啓発提案プロジェクトを立ち上げ、調査を行った。本研究により、学科ごとの学生における専門性への認識のあり方についてのプログラムの提案ができるものと考える。 本研究においては、「自閉症の理解・啓発」をテーマとし、両学科の学生を2グループ構成し、啓発内容の提案をすることとした。対象学生は、学内で公募を行い7名の学生を対象とした。また、学生自身の専門性への認識等の深まりについては、プロジェクトの取組みの各段階において個別の自記式アンケートおよびインタビューを実施し、その結果を用いて検討することとした。 プロジェクト実施前と比べ両学科ともに専門性について、具体的な表現が増え、視点の違いを知り、自身の視点を意識化するプロセスが推察された。このような結果に影響した要素として、①プロジェクトという形でゴールを明確化しやすく取り組みがスムーズであったこと、②プロジェクトにおける各自の役割がそれぞれの視点を考察する要素になったのではないかと考えられた。さらに、その促しとしての③教員の介入が重要な役割を果たしていると考えられた。S89

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 93

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です