医学会誌42-補遺号
89/102

27大-2:前立腺肥大症患者に対するタダラフィル投与前後での陰茎上腕血圧比の検討 研究代表者:永井 敦、福元 和彦(生理系分野 尿路生殖器病態生理学)【目的】EDは動脈硬化の影響として最初にあらわれる症状で、脳卒中や心筋梗塞等の重篤な心血管イベントの前兆となることが報告されている。われわれはED患者に対し血管内皮機能検査として陰茎/上腕血圧比(penile brachial pressure index:PBI)検査を行っており、 PBIと勃起症状スコアであるSHIM scoreが相関していることを報告した。PBIの有用性をさらに検討するために前立腺肥大症に対してtadalafil(5mg)を処方された患者にPBIを測定した。【対象・方法】2014年3月から2015年12月までに前立腺肥大症と診断され、α1遮断薬の効果がなかった症例でtadalafil(5mg)を新規処方された12例を対象とし、投与前と投与12週目でPBIを測定した。測定にはform PWV/ABI(オムロンコーリン社製)を使用し、陰茎収縮期血圧測定には足趾用のカフを使用した。【結果】年齢中央値は66歳、SHIM scoreは平均8.5と低下していた。Tadalafil 投与により排尿症状とともにSHIM scoreも有意に改善した(p<0.05)。動脈硬化の程度を示す脈波伝播速度(baPWV)値は投与前が1625(cm/s)から1486(cm/s)と有意に改善していた。PBI値に関しては投与前の1.02から1.38へと改善していた。【結論】前立腺肥大症患者に対しtadalafil(5mg)の連日投与を行うことで、baPWVとPBIが有意に改善した。PBIはED患者に対するPDE5阻害薬の治療効果判定手段として有用である可能性が示唆される。27大-3: 嚥下障害・咽喉頭異常感症に対するカプサイシンの効果-組織ドプラ法(TDI: Tissue Doppler Imaging)を用いた頚部食道運動機能評価の臨床応用-研究代表者:塩谷 昭子、中藤 流以(形態系分野 消化管病態学)【背景】嚥下障害は高齢者に多く、誤嚥性肺炎等の原因となるため、慎重な対応が求められるが、その治療法は確立していない。近年、TRAPV1 とその活性化により放出されるSubstance P (SP) の関係が明らかとなり、TRAPV1の特異的アゴニストであるcapsaicinにより嚥下障害が改善したとする報告が存在する。また、嚥下機能評価にTDIを用いた超音波検査を臨床応用した報告はない。【目的】プラセボ二重盲検化crossover studyで、嚥下障害に対するcapsaicinの効果を明らかにする。さらにTDIによる食道運動機能評価法と嚥下機能改善評価項目との関連性についても明らかにする。【方法】嚥下障害を訴え外来受診した患者49人を対象とした。Capsaicinは、capsaicin入り食品であるカプサイシンプラス®を用いた。嚥下障害は問診票(EAT-10)を用いて評価し、Visual analog scare(VAS)により自覚症状の改善を評価した。他覚的評価項目として唾液中SPとTDIによる頚部食道運動を評価し、その相関性について検討した。【結果】実薬有効例は19例(38.8%)でプラセボ(3例、6.1%)よりも有意に有効であった (P<0.01)。有効例ではcapsaicin投与後の唾液中SP変化率が有意に増加し(P=0.04 vs.無効例 P=42)、TDIによる頚部食道運動評価ではプラセボ投与後とcapsaicin投与後での頚部食道最大開大時間(cervical esophageal wall opening time: CE-OT)変化率が有効例で有意に短縮化していた(P=0.04 vs. 無効例 P=0.77)。また唾液中SP変化率とCE-OT変化率との間に有意な負の相関を認めた(R=0.53、P=0.001)。【結論】唾液中SP濃度と頚部食道運動には関連性が認められ、capsaicinは嚥下障害に対する治療選択肢の一つになり得る。― 大学院 ―S85

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 89

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です