医学会誌42-補遺号
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27基-5:ヒトiPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いたドラッグスクリーニング研究代表者:鎌尾 浩行(眼科学1)【目的】網膜下血腫は重篤な視力障害を引き起こすため、t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)を併用した血腫除去手術が行われているが、これまでに薬剤毒性が原因と思われる網膜色素上皮細胞(RPE)障害の報告がある。そこでt-PAを安全に臨床で用いるために、ヒトiPS細胞由来RPEとARPE19(株化RPE)を用いてt-PAの毒性と効果を検討した。【方法】ヒトiPS細胞由来RPEとARPE19を様々なt-PA濃度(0、10、20、50、500、1000、2500、5000μg/ml)を含有した培地で24時間培養後、経時的(1、7、28日後)にRPEの形態を評価した。さらにRPEへの毒性評価として培地中のLDH活性を測定し、また薬効評価として色素上皮由来因子(PEDF)と血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌量を経時的に測定した。【結果】t-PA培地添加1日後、ヒトiPS細胞由来RPEは1000μg/ml以上、ARPE19は2500μg/ml以上において明らかなLDHの活性の上昇認め、細胞が培地中に浮遊していた。その後LDH活性が上昇する事は無かった。一方のPEDFとVEGFの分泌量は、LDH活性が上昇した濃度では減少したが、LDH活性が上昇しなった濃度では変化はなかった。【結論】t-PA含有の培地が1000μg/ml以上においてRPEに細胞障害を認めた。一方、t-PAが500μg/ml以下においてRPEに細胞障害を認めず、また機能に変化も認めなかった。27基-74:冠循環血行動態モデルによる新しい冠血流予備能評価指標の開発 研究代表者:小笠原 康夫(医用工学) 冠血管狭窄病変の定量的評価法として血管拡張薬投与時(冠血管最大拡張時)の狭窄部上流圧と下流圧の比(FFR)測定が心臓カテーテル検査で実施され、冠血管治療の診断基準として用いられている。しかし、現在の用いられているFFRは心周期全体の平均的な評価値であり、冠循環の血行動態の特異性が利用されておらず、狭窄部の生理的機能評価が適正に行われているとはいいがたい。本研究では、これまでの冠循環血行動態の解析研究の成果を臨床における狭窄病変評価にいかして、より定量的かつ有効な診断基準となるFFRの解析手法の確立を目的とした。具体的には、心周期を収縮期と拡張期に分け、拡張期のみ血圧を用いたFFR(d-FFR)評価法を用いて、血管最大拡張時のd-FFRの評価を行いうる解析システムの開発を行った。とくに、血管抵抗が十分低下している拡張期の区間についてのみ血圧比を算定評価する解析プログラムを試作し、安静時から最大拡張期にわたる拡張期血圧比の算定システムを開発した。この際、従来法によるFFRとd-FFRの比較を行い検討し、拡張期FFRは従来法と同様に安定して算定できることが分かった。このシステムを用いることにより拡張期の血行動態を明確に定量化できることが窺われた。― 新技術 ―S82川 崎 医 学 会 誌

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