医学会誌42-補遺号
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27基-85:チタン酸ナノシートの毒性機序および免疫機能影響の解析研究代表者:西村 泰光(衛生学)【緒言】チタン酸ナノシート(TNS)は期待のシート状ナノ素材であるが、そのナノ毒性は未知である。末梢血単核球(PBMC)を用いた実験からTNSがカスパーゼ依存性アポトーシスを誘導し、単球が空胞形成を伴う細胞死を示すことを報告してきた。そこで、TNS曝露後の空胞形成機序の解析を行った。【材料と方法】PBMCより磁気ビーズでCD14+単球を単離し10μg/mlのTNS曝露下で1又は2日間培養した。細胞を固定・予備包埋・後固定・脱水・樹脂包埋した後、超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。パラフィン包埋した細胞の切片を作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)で空胞内部を観察した後、エネルギー分散型X線分析でチタンの有無を確認した。PBMCの1日培養により接着細胞として得た単球を3日間予備培養した後、蛍光Dextranで標識し、TNSを加え12時間培養し空胞形成とエンドソーム構造を蛍光顕微鏡で解析した。【結果】TEM画像からTNS曝露1日後の単球に空胞形成が確認され、2日後には空胞は大型化し多数見られた。空胞内部には数十nmのTNS様物質の存在が確認され、多くが空胞内壁近傍に存在した。SEM画像から空胞内壁に凹凸な集塊様の領域が確認され、X線分析はチタンの存在を示した。TNS曝露時の接着細胞では蛍光Dextranは細胞内に限局性に存在し、空胞への共局在が確認された。【結論・考察】TNSが単球内に取り込まれ空胞内に存在し、空胞形成がエンドソーム経路と関連することが明らかとなった。小胞内に取り込まれたTNSがエンド・リソソーム経路に侵入し空胞形成が誘導されたと考えられる。TNSの毒性機序と小胞内膜機能との関連が示唆される。S81

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