医学会誌42-補遺号
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27基-26:肺癌におけるXAGE1(GAGED2a)免疫の耐性機構の解明とその制御研究代表者:大植 祥弘(呼吸器内科学)【背景】肺癌でも抗体免疫療法の道が開かれたがその効果は未だ不十分であり、さらなる腫瘍局所における免疫抑制機構の解明が重要である。【方法と対象】新鮮検体17例を用いたフローサイトメトリー法および肺癌組織366例のマイクロアレイ(TMA)による免疫染色法で免疫抑制因子の発現解析を行った。【結果】新鮮検体を用いた解析では、局所浸潤T細胞上の免疫抑制因子は、PD-1、TIM-3分子がBTLA、LAG-3に比べ有意に発現が強かった。一方PD-1,TIM-3のリガンドであるPD-L1およびGalectin-9の腫瘍における発現をTMAで解析したところ、PD-L1は主に細胞膜と細胞質で、Galectin-9は細胞質が染色された。さらに、in vitroの系で、抗原特異的T細胞は、Galcectin-9の添加によりアポトーシスが誘導された。さらに、予後とこれらの因子を解析したところ、腫瘍におけるGalectin-9の発現は生存に負に相関することが明らかとなった。【結論】進行期肺腺癌の腫瘍局所においてTIM-3/Galectin-9経路は新たな免疫抑制機構であり、これらを標的とした治療戦略が重要である。27基-19:小細胞肺がんに共発現するPD-1・PD-L1分子の細胞増殖調節に関する研究研究代表者:山根 弘路(総合内科学4)【背景】免疫チェックポイントの主たる調節因子であるPD-1分子は活性化リンパ球およびリンパ腫細胞の一部に発現することが知られており、腫瘍側のPD-L1と結合することでリンパ球を不活化し、免疫寛容に関与するとされていた。しかしながら、先行する我々の実験結果では一部の肺小細胞細胞株においてはPD-1/ PD-L1分子の共発現を確認している。(Yamane H et al. Am J Cancer Res. 2015)このことから、一部の腫瘍細胞においてはPD-1/PD-L1を介した細胞増殖調節機構が存在するものと考えられ、今回小細胞肺がんを用いてその機能解析を行った。【結果】細胞表面にPD-L1陽性かつPD-1陽性のSBC-3およびPD-L1陽性、PD-1陰性のSBC-5細胞株の双方で培養上清中のsPD-L1濃度は経時的に上昇した。これらの結果を踏まえ、濃度条件を変えてsPD-L1を添加し、細胞増殖抑制の有無について確認したが、両細胞株ともsPD-L1添加による細胞増殖抑制効果は認められなかった。しかしながら、抗PD-1抗体であるnivolumabを各種濃度条件下に添加し、細胞増殖の亢進の有無を確認したところ、SBC-3細胞株においてはnivolumab添加しない場合と比較し、細胞密度が上昇したday8以降では、4μg/ml・40μg/mlのいずれの添加条件下でも有意差をもってSBC-3細胞株の増殖亢進が認められた。(T-Test: P=0.027 および0.019)【考察】SBC-3細胞株においてPD-1/PD-L1の系はパラクラインに細胞増殖調整に関与している可能性があり、今後nivolumab添加条件下における細胞増殖シグナルの解析をWestern blottingにて施行する予定である。S60川 崎 医 学 会 誌

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