医学会誌42-補遺号
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27基-81:粘液産生肺腺癌の増殖因子の解明と至適化学療法の確立研究代表者:清水 克彦(呼吸器外科学)【背景】肺腺癌の病理分類が改訂され、新たに浸潤性粘液産生腺癌(invasive mucinous carcinoma以下IMA)が独立したカテゴリーとして分類された。IMAは他の腺癌と違い、経気道的肺内転移を起こしやすく、手術で切除できたとしても再発を起こしやすいとされる。【方法】2007年1月から2013年12月の間に川崎医科大学附属病院呼吸器外科にて手術を施行した非小細胞肺癌症例のうち病理学的に診断されたIMA29例。【結果】術前CT画像にてIMAをSolid type10例・Bubbling type9例・Pneumonic type10例に分類した。術前診断は19例に施行し、15例を腺癌と診断でき、うち9例に粘液産生を認めた。術前診断のつかなかった14例中10例は術中に診断した。術式は肺葉切除23例、部分切除6例(積極縮小2例、消極縮小4例)であった。CT画像分類で臨床病理学的因子を比較すると、 Pneumonic typeは有症状の患者割合、腫瘍径が有意に高値であり、Bubbling typeはSUVmax値が有意に低値であった。病理学的には3群間にリンパ節転移・脈管侵襲・胸膜浸潤の割合に差を認めなかった。再発はPneumonic typeに有意に多く、ほとんどが肺内再発であり、遠隔転移は1例も認めなかった。無再発生存期間においてもPneumonic typeが有意に不良であった。切除検体の免疫染色においては3群ともEGFR遺伝子変異・TTF-1発現が低く、CK7・20の発現が高く、Ki-67indexは低い傾向にあり、特徴的な差異は認めなかった。【結語】IMAをCT画像で分類すると、Pneumonic typeは有意に予後不良であったが、病理学的因子や免疫染色での特徴的な因子は見られなかった。27基-25: 食道癌細胞TE-1に対するEPA(Eicosapentaenoic acid)とCDDP(cisplatin)の併用に関する研究研究代表者:窪田 寿子(消化器外科学)【目的】エイコサペンタエン酸(EPA)はがん細胞増殖抑制作用・抗炎症作用を持つことが示唆されている。われわれはEPAが食道癌細胞株に対してアポトーシス誘導および細胞増殖抑制作用を有することを報告した。今回EPAとCDDP(CDDP)の細胞増殖に対する併用効果の有無を検証した。【方法】以前の研究で食道癌細胞TE-1の細胞増殖に対するIC50は260μMと決定した。今回はEPA100μM、200μMに高濃度CDDP(0~30μg/ml)を24時間同時添加した場合、低濃度CDDP(0~10μg/ml)を48時間同時添加した場合のTE-1細胞の細胞増殖率をWST-1によって測定した。【結果】EPA単独(100μM、200μM)ではTE-1細胞の細胞増殖を抑制しなかった。高濃度CDDP単独(10ug/ml,20ug/ml,30ug/ml)では50~68%に増殖を抑制していた。EPAとCDDPを併用した場合、EPAの濃度依存的に増殖を抑制していたが、高濃度CDDPの場合、CDDP単独での抑制効果が大きすぎて併用効果があまり見られなかった。化学療法におけるCDDP血中濃度が2~5μg/mlという報告があったので、低濃度CDDP(0.1、1、10)で再度観察した。その結果、低濃度CDDP単独では48時間添加で57~85%に増殖を抑制していた。EPAを同時添加した場合、EPAの濃度依存的に増殖を抑制していた。(EPA100uM/CDDP 2ug/ml ・67%、EPA100uM/CDDP 5ug/ml・ 36%、EPA200uM/CDDP 2ug/ml ・55%、EPA200uM/CDDP 5ug/ml・26%)【結語】EPAはTE-1細胞においてCDDPの腫瘍増殖抑制効果を相乗的に高めた。その効果は低濃度CDDPでも同様に見られた。その作用機序については不明であり、今後検討したいと考えている。S58川 崎 医 学 会 誌

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