医学会誌42-補遺号
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27基-79:消化器がんの増殖シグナルの網羅的解析と新規薬剤の探索的研究 研究代表者:山村 真弘(臨床腫瘍学)【背景】消化管間質腫瘍(GIST)は、従来の抗がん剤耐性であり手術が唯一の根治治療である。GISTがc-kit遺伝子の機能獲得性変異による増殖であることが報告され、分子標的薬の開発は目覚ましい進歩を遂げたが薬剤耐性の問題がある。本研究では薬剤耐性GIST細胞を作成し、耐性分子の同定とその阻害薬の有効性の検討を行った。【方法】GIST細胞にイマチニブを数か月作用させ、50%細胞増殖阻止濃度が1000倍以上の耐性細胞を作成した。マイクロアレイを用いて耐性細胞で高発現している分子から最も有効な標的となりえるものを探索した。【結果】GIST細胞ではc-kit以外に複数のHSP関連遺伝子の高発現がみられ、耐性細胞では転写因子、ミトコンドリア、チロシンキナーゼなどの増殖シグナルを含む多くの遺伝子の高発現がみられた。特に細胞増殖関連分子に注目すると、HSP90のクライアント蛋白が多く含まれていることがわかった。GIST細胞および薬剤耐性細胞にHSP90阻害薬を作用させると、両細胞ともに従来の薬剤よりはるかに低濃度で増殖抑制、アポト-シスを誘導した。また、Western blottingや抗体アレイでは、耐性細胞で複数のRTKおよびS6のリン酸化の増強がみられたが、HSP90阻害薬は従来の3つの分子標的薬の中で最もRTKやS6のリン酸化抑制効果が高かった。【結論】HSP90阻害薬は、GISTに対して最も有効な薬剤であることが判明した。27基-17: 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の染色体上での発現パターンとEGFRチロシンキナーゼ阻害剤感受性についての検討研究代表者:越智 宣昭(総合内科学4) 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)はEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対し、劇的な治療効果をもたらす一方でその耐性化が問題となっている。本来、EGFR遺伝子変異株はEGFR-TKIに感受性が高いが、in vitroで効果のあるべき濃度のEGFR-TKIでも死滅しない細胞群が存在していることを経験している。我々はこれまでに、同一のEGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株においても個々の細胞によりEGFR遺伝子の染色体上での発現パターンが異なるものが存在することを確認している。このような染色体上でのEGFR遺伝子の発現パターンによってもEGFR-TKIへの感受性が異なることが、実臨床で問題となるEGFR-TKI耐性や初期治療への反応性にも関与しているのではないかと推察している。また、それらの遺伝子発現パターンが薬剤耐性時にどのような変化を起こすかについては十分に検討されていない。以上より、その基礎的検討として、本研究を立案した。 EGFR遺伝子変異陽性肺癌細胞株であるPC-9、H3255、およびH1975細胞株を限界希釈法にてクローニングを行い、幾つかのサブクローンを樹立した。それらサブクローン毎のEGFR遺伝子増幅、EGFR蛋白発現、およびEGFR-TKI感受性について検討中である。S57

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