医学会誌42-補遺号
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27挑-6:ミトコンドリアの品質管理からみたNASHの病態ならびに病態制御に関する研究研究代表者:原 裕一(肝胆膵内科学)【目的】非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)においてミトコンドリアの修復機構であるmitophagyが抑制されていることが示されている。そこでわれわれはmitophagyの誘導剤として報告のある鉄キレート剤のDeferiprone (DFP)を用いてmitophagyを誘導し、NASHの肝発癌抑制に有用か否かを検討した。【方法】In vitroの検討としてHuh-7にDFPを添加しmitophagy制御分子の解析を行った。In vivoにおいてはSTAM®Miceを用いDFP投与群、非投与群で比較検討を行った。【結果】Huh-7へのDFP投与で、mitophagyが誘導され、酸化ストレスは抑制された。鉄キレートによるmitophagy誘導の機序を探るため、DFP処理後のミトコンドリア内2価鉄の変化を観察したところDFPによりミトコンドリア内の2価鉄が減少しており、これを制御するミトコンドリアフェリチンをノックダウンするとmitophagyが抑制されることからmitophagyの誘導にはミトコンドリアフェリチンが重要であることが示唆された。さらにSTAM®MiceにおいてDFP投与群ではmitophagyが誘導され、肝臓における腫瘍個数、最大腫瘍径、肝脂肪化、肝線維化の抑制を認めた。DFP投与群では活性酸素の産生が抑制されていた。さらにsiRNAを用いて、STAM®Miceの肝におけるmitophagyを抑制したところ、DFP投与時の腫瘍個数は増加し、最大腫瘍径も増大した。【結論、考察】DFPはミトコンドリア障害に起因する酸化ストレスがもたらす病態を改善させ肝発癌を抑制した。【目的】妊婦の風疹罹患後先天性風疹症候群の児が高率で出生する。風疹抗体陽性でも再感染があり、国内外から先天性風疹症候群の報告が多数ある。わが国では抗体陰性(HI抗体8倍未満)だけでなく16倍以下もワクチン接種を勧奨している。27基-8: 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態にかかわるM2マクロファージ(CD163)の関連研究代表者:川中 美和(総合内科学2)【目的】近年、肥満者の脂肪細胞においてはマクロファージの細胞数の増加や活性化することが分かってきており、それらが動脈硬化や肝臓や筋肉のインスリン抵抗性の原因、さらには糖尿病やNASHなどの生活習慣病を発症させる可能性が指摘されている。しかしながら、これまでにNASH患者と血清マクロファージとの報告はない。そこで、今回NASH患者におけるマクロファージの活性化マーカーであるsolubleCD163(sCD163)を測定し、NASHの病態や進展や炎症との関連について検討を行った。【対象と方法】当院で肝生検を施行したNAFLD247例に対してsCD163の測定を行い、NAFLDの肝組織像(Stage, Grade, steatosis,NAScore(NAS))との関連を検討した。くり返し肝生検にて組織学的変化の検討が可能であったNAFLD100例(5.0±2.7y)のsCD163の測定を行い、肝組織像の変化と対比させた。【結果】sCD163は線維化の進展とともに上昇し、特にF4はF0-3に比べさらに高く、線維化進展例、特に肝硬変の鑑別に有用であった。また、Gradeにおいても進展とともに上昇していたが、Steatosisとの関連はなかった。繰り返し肝生検をした100例中線維化の改善や、NASが低下した症例ではsCD168が低下していたが、線維化悪化例、NAS悪化例では上昇していた。【結語】NAFLDにおけるsCD163はNASHの炎症、線維化を反映し、NAFLDの中でも予後の悪いNASHを見つけることができる。S44川 崎 医 学 会 誌

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