医学会誌42-補遺号
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27基-102:下部尿路虚血モデルにおけるPDE5阻害剤および水素水投与後の膀胱血流の評価研究代表者:藤田 雅一郎(泌尿器科学)【目的】下部尿路症状(排尿・蓄尿障害)は骨盤部、特に下部尿路組織への血流障害が原因の一つと考えられ、この過程には、動脈硬化や酸化ストレスが関与していると思われる。2007年にOhtaらが、水素がもつ抗酸化、抗アポトーシス作用によって疾患の予防と治療に応用できることを報告し、これ以降、水素の研究が進展している。我々は今回、膀胱排尿開口部閉塞のラットモデルにおいて水素水投与の有効性を検討した。【方法】9週齢の雌性ラットを用いて開腹し、尿道に19G針を尿道に沿わせた状態で尿道を結紮し、尿道の部分閉塞を作成した(BOOモデル)。作成後から水素水を投与する群(投与群)と投与しない群(なし群)に分け、4週間経過した時点で、膀胱を摘出し、重量、サイトカインを測定し両群間で比較、検討した。【結果】重量は投与群 0.125g(0.094-0.127)、なし群 0.294g(0.16-0.997)、IL-6は投与群 220ng/ml(20-620)、なし群 20ng/ml(20-20)、8-OHdGは投与群 2.79ng/ml(0.5-4.5)、なし群3.975ng/ml(3.5-4.5)であった。重量及び、8-OHdGにおいては、水素水投与群でなし群より低値を示し、IL-6では投与群で高値であった。【結語】IL-6では、予想値とは逆の値であったが、重量および8-OHdGでは、水素水投与により低値を示し、組織障害度の軽減に関与していることが示唆された。27基-89:新しいラット精索静脈瘤モデルの作成研究代表者:平田 啓太(泌尿器科学) 【目的】本研究は、ラットの精索静脈瘤モデルを作成することで、精索静脈瘤が及ぼす精巣の組織学的変化の解明や造精機能及び妊孕性への影響を明らかにすることを目的とした。 【対象と方法】8週齢、雄性、Sprague-Dawleyラットを用いて、左内精静脈から総腸骨静脈に流入する性腺静脈を結紮し、左腎静脈を左内精静脈合流部より下大静脈側で部分結紮することで、精索静脈瘤モデルを作成した。術後12週目に精子を回収し、精子運動解析装置を用いて精子所見を検討した。また、左精巣を摘出し、精巣内における免疫組織学的、生化学的変化を検討し、精索静脈瘤モデルの妥当性を検証した。 【結果】精子所見では、精索静脈瘤モデル群(n=7)はsham群(n=7)と比較して、精子濃度(Sham群:22.0±5.2 106/ml,Varico群:5.4±2.4 106/ml )、運動率(Sham群:94.6±6.8%,Varico群:61.6±22.0%)が有意に低下していた。(P<0.05)また、精索静脈瘤モデル群はsham群と比較して、組織破壊(HE染色)が認められた。さらに、ELISA法にて酸化ストレス(8-OHdG)が上昇し、アポトーシス細胞(TUNEL染色)が増加していた。 【結語】本術式による精索静脈瘤モデルの妥当性が示された。精索静脈瘤の病態として、酸化ストレス、およびアポトーシスが関与していると考えられた。S38川 崎 医 学 会 誌

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