医学会誌42-補遺号
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27基-46:肺虚血再潅流傷害の機序解明と新規制御法の確立研究代表者:花崎 元彦(麻酔・集中治療医学3) 肺移植術後管理において大きな問題は虚血再潅流傷害である。また移植術に限らず通常の肺切除術でも術後肺合併症の発症には、手術操作や一側肺換気に引き続く低酸素性肺血管攣縮によって起こる虚血と、その解除による再潅流が影響していると考えられている。 このように、呼吸器外科手術の周術期安全性を向上させるためには虚血再潅流傷害のメカニズムの解明が重要である。 これまでに我々はラット肺虚血再潅流傷害時に低分子量G蛋白RhoAとその下流のシグナル分子Rho-kinase(ROCK)によるRhoA-ROCK系およびCPI-17を介したシグナル伝達が亢進していることを示した。今回は同じモデルを用いて、虚血再潅流傷害に関連するマイクロRNAの同定を行った。雄性 Wistar ラットを3群(対照(C)群、虚血再潅流(I/R)群、セボフルラン(S)群)に分けた。 ペントバルビタールで麻酔し動静脈路確保、気管切開を行った後に人工呼吸を開始した。胸骨横切開で両側開胸し、左肺門部をクランプ(=虚血、1時間)、解除(=再潅流、1時間)の後に左肺を摘出しRNA later液中に保存もしくは凍結保存した。C群は開胸操作のみを行った。またS群はI/R群と同様のプロトコルだが気管切開後の全行程で2%セボフルランを付加した。 現在、3群から得られた肺組織を用いて、マイクロRNAアレイ結果のクラスタリング解析、さらに個々のマイクロRNA発現変動の validationについてアルタイム PCR を用いて解析中である。27基-83: デジタルモニタリング式胸腔ドレナージシステム(Thopaz)を応用した肺切除術後のエアリークの定量的評価と、肺瘻閉鎖に影響を及ぼす因子の解析研究代表者:最相 晋輔(呼吸器外科学) 呼吸器外科における肺切除後の胸腔ドレーン管理は、術後管理において重要である。これまで低圧持続吸引が原則とされてきた。このため、肺切除後の肺瘻発症の危険因子や術後肺瘻に対する対応・治療についての客観的評価や科学的な解析は不可能であり、外科医の経験に基づいて判断・治療が行われてきた。近年デジタルモニタリング式胸腔ドレナージシステム(Thopaz)が臨床応用され、胸腔内圧を一定に保つという新たな概念に基づく胸腔ドレーン管理が行われるようになった。従来までの低圧持続吸引管理と比較したRCTではドレナージ期間や入院期間の短縮等の有用性が報告され(C Pompili, Ann Thorac Surg, 2014)、欧米では標準的な胸腔ドレーン管理とされている。 当院では2014年8月からThopazを導入して以降、手術直後は従来型の電動式低圧持続吸引システム(メラサキューム)を用いて持続吸引とし、手術翌日に肺瘻があればThopaz管理に変更している。これまでの使用経験から、Thopazとメラサキュームとの比較検討を後方視的に行ったところ、術後ドレーン留置期間は、Thopaz群;5.1±2.9日、メラサキューム群;6.3±5.2日で、Thopaz群で短い傾向にあり(p=0.078)、当科でのThopaz使用に問題がないことを確認した。Thopaz導入を用いることにより、肺瘻の定量的評価や胸腔内圧の測定・モニタリングが可能となったことから、引き続いてThopaz管理を行って症例を蓄積し、肺瘻のパターンや肺切除量毎の至適胸腔内圧の解析等を行う。S36川 崎 医 学 会 誌

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