医学会誌42-補遺号
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27挑-8: Voxel-Based Specific Regional System for Alzheimer’s Disease(VSRAD)を用いた全脳照射後の脳萎縮の定量評価研究代表者:釋舍 竜司(放射線医学(治療))【背景】全脳照射後の晩期有害事象である脳萎縮や認知症は、Quality of lifeを低下させる原因となり、全脳照射を敬遠する理由の一つとなりうる。しかし、脳転移症例において全脳照射を行わずに定位照射や手術療法などの局所治療を優先させると、高確率に頭蓋内再発の可能性があるため、全脳照射は、今後も転移性脳腫瘍の重要な治療法の一つである。もし、全脳照射により脳萎縮におちいりやすい脳部位を特定し、さらに認知機能に影響を与える脳萎縮のパターンを特定できれば、その特定部位への照射を避ける事で、腫瘍のない正常組織への被曝線量を最小限に抑える事が可能となり、認知機能低下を予防できるかも知れない。【目的】全脳照射後の脳萎縮・認知症の発生頻度や脳萎縮の形態学的分類を、新しい評価法であるVoxel-Based Specific Regional System for Alzheimer’s Disease(VSRAD)を用いて行う。【研究デザイン】研究を前期と後期にわけ、前期は当院の倫理委員会より承認を得る。後期は、倫理員会承認日から2018年12月31日までに当院で、転移性脳腫瘍に対する全脳照射を予定される患者30名(脳転移を有するPS=2以下、50歳以上の患者)の前向き研究を行う。【方法】全脳照射後のルーティン検査(2-3ヶ月間隔)で行われる頭部MRI検査の画像情報を、VSRADを使用し再計算し、脳の微細な萎縮性変化を視覚的かつ客観的に評価する。さらに、前向き研究では、認知機能低下の自覚症状、臨床経過やミニメンタルスケール検査や改訂版長谷川式簡易知能評価スケールを用いて、認知機能低下についても検討を行う。【研究の経過】当院の倫理委員会より承認を得、後期(前向き研究)への準備段階である。27基-75:骨格筋幹細胞の多様性から筋疾患治療法への応用を目指す 研究代表者:濃野 勉(分子生物学1(発生学))【背景】成熟個体の各部域を構成する骨格筋は、筋線維型(遅筋・速筋・中間型筋で分類される)組成や機能性に大きな差異を有し、筋疾患の種類によっては発症部位が限定される場合がある。そこで我々は、筋肥大・再生時に互いに融合して新生筋線維(筋管)を形成する筋幹細胞(サテライト細胞)も部域特異性を有する可能性に着目した。本研究では、マウス後肢の各骨格筋からサテライト細胞を単離し、筋分化能や筋線維型を比較評価して基礎的知見の捻出を目指した。【方法】成熟雄C57BL/6マウスのヒラメ筋・足底筋・腓腹筋・長趾伸筋・前頸骨筋および背と臀部を構成する骨格筋からサテライト細胞を単離した初代培養系を準備した。80-90%コンフルエントになるまで増殖させてから、5日間分化誘導をかけて筋管を形成させた。その後、筋管マーカーや筋分化制御転写因子および筋線維型マーカーの発現量を比較した。【結果・考察】採取したサテライト細胞からいずれも筋管の形成が観察されたが、長趾伸筋ではtotal MyHC(ミオシン重鎖)やtroponin-Tの発現量が低く、筋管形成能が他の細胞よりも低い可能性が認められた。MyoD・Myf5・myogenin・MEF2C・MEF2Dなどの転写因子は各筋間で発現量に差が認められ、各々で異なる筋分化メカニズムを有する可能性が予想された。なお、ヒラメ筋では遅筋型のslow MyHCの発現量が高いことが明らかとなり、サテライト細胞が筋線維型制御に関わることも示唆された。これらの結果より、骨格筋の部域依存的にサテライト細胞が多様化している可能性が明らかとなった。S30川 崎 医 学 会 誌

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