医学会誌42-補遺号
31/102

27基-20:シュワン細胞での異型トランスサイレチンの代謝と細胞内凝集の研究研究代表者:村上 龍文(神経内科学) これまで我々はTTRアミロイドニューロパチーの神経障害機序を明らかにするため、FAPモデルマウスからヒト異型TTR遺伝子を発現する自発的不死化シュワン培養細胞株TgS1を確立し、その培養上清が初代後根神経節(DRG)培養細胞の神経突起成長を抑制すること、高齢FAPマウスDRGの免疫染色でシュワン細胞や衛星細胞の細胞質にTTR陽性顆粒が観察されることを報告した。今回はこれらの機序について更に検討した。 正常TTR組み替え蛋白と異型TTR組み替え蛋白を正常マウスシュワン細胞株IMS32の培養上清に添加し、初代DRG培養細胞に加え神経突起成長抑制効果を調べた。異型TTR蛋白を添加した培養上清では正常TTR蛋白に比し神経突起成長が有意に抑制された。またTgS1細胞にプロテオソーム阻害剤MG132を添加し、各種抗体で免疫染色を施行し、共焦点顕微鏡で観察すると、アグリソームの部位にTTR凝集が観察された。これを透過型電子顕微鏡で観察するとはautolysosomeが多数見られた。 以上の結果からシュワン細胞由来の異型TTRが感覚神経細胞突起の成長に抑制性の効果を及ぼし、感覚神経障害発症に関与していることが示唆された。またシュワン細胞内TTR凝集はアグリソーム-オートファジー系が関与しているかもしれない。27ス-2:アルコールの自発摂取に影響を与える標的因子の探索研究代表者:山本 昇平(薬理学) 長期にわたるアルコールの多量摂取はアルコール依存症を誘発する。アルコール依存症病態下では中枢神経系の興奮性および抑制性神経伝達の間に不均衡が生じていると考えられている。その不均衡形成には、脳内神経細胞における Ca2+ 動態を中心とする神経情報伝達機構の変化の関与が予測されている。そこで本研究では、アルコールの自発摂取に対する Ca2+ 動態に影響する薬物の関与について、アルコール慢性処置マウスを用いて検討した。 C57BL/6J 系雄性マウスに pyrazole および ethanol 投与後、アルコール蒸気 (16 時間 / 1日)を 4 日間吸入させた後3日間休薬させた。これを2サイクル処置したマウスをアルコール慢性処置マウスとした。アルコールの自発摂取は 2-bottle choice 法に従い、自由に摂取させた 15% ethanol および水の摂取量により評価し、飲酒欲求の指標とした。 アルコール慢性処置群において、対照群と比較してアルコール自発摂取量の有意な増加が認められた。カルシウムチャネル α2/δ-1 subunit に結合する薬物である gabapentin の 2-bottle choice 法施行 30 分前における脳室内投与は、アルコール慢性処置後のアルコール自発摂取量増加を用量依存的に抑制した。アルコール依存時での飲酒欲求には、カルシウムチャネル α2/δ-1 subunit が重要な役割を果たしていることが示唆された。S27

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 31

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です