医学会誌42-補遺号
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○抄録の並び順は、原則としてポスター展示の並び順となっております。27基-54:セロトニンニューロンによるドーパミン系介在ニューロンの調節 研究代表者:清蔭 恵美(解剖学) 匂い物質を受けた嗅受容細胞の軸索は、嗅球表層にある特定な糸球体と呼ばれる構造に収束する。この匂い情報は糸球体を構成する傍糸球体ニューロン群(periglomerular cell, PG; external tufted cell, ET; short axon cell)と、セロトニン(5-HT)ニューロンをはじめとした遠心性ニューロンによっても調節を受けている。5-HTニューロンは様々な神経化学物質を発現するPG(介在ニューロン)群に対して非対称性シナプスを作り、またETに対しては5-HT2A受容体を介して脱分極を引き起こすことが報告されている。しかし、これまでETと5-HTニューロン間のシナプス結合の存在が明らかになっておらず、また介在ニューロンから見た5-HTとのシナプス結合部位も未だ不明なままである。そこで、以前から解析を進めてきたドーパミン系介在ニューロンに焦点を当て、tyrosine hydroxylase (TH)-GFPマウスを使って、抗5-HT抗体、ETのマーカーとして抗cholecystokinin抗体を用いた蛍光多重染色を行った。コンタクト部位を解析した結果、5-HTの軸索はTHニューロンの樹状突起末端よりも細胞体近傍の樹状突起上に主にコンタクトする傾向が見られた。このことは、5-HTからTHニューロンへのシナプスを介した入力効果が高いことが示唆された。現在、ETと5-HTニューロン間のシナプス結合の解析を進めているが、これら神経回路の形態学的な基盤を築くことで、遠心性ニューロンと嗅覚調整との関係解明に近づくと考えられる。27基-78: ラット嗅球糸球体層における非GABA介在ニューロンのシナプス解析研究代表者:野津 英司(解剖学) 嗅球は比較的少数のニューロン種から構成される明瞭な層構造を持つ脳の領域である。投射ニューロンである僧帽細胞は嗅球表層の糸球体で匂い情報を受け、種々の介在ニューロンからの調整を受けた後、匂い情報を高次中枢へ投射する。糸球体周囲には介在ニューロンである傍糸球体細胞(JGニューロン)が多数分布しており、入力の段階での調節を行っていると考えられている。JGニューロンは形態的特徴からtype 1 JGニューロンとtype 2 JGニューロンの2種に分類され、γ-アミノ酪酸免疫陽性ニューロン(GABAニューロン)とcalbindin免疫陽性ニューロン(CBニューロン)およびcalretinin免疫陽性ニューロン(CRニューロン)はそれぞれtype 1 JGニューロンとtype 2 JGニューロンの代表的なニューロン群である。これらはいずれも抑制性と考えられる対称性シナプスを形成しているが、匂い情報の処理過程において異なる働きをしていることが考えられるため、電子線トモグラフィーによりそのシナプス形態の詳細な解析を行った。その結果、GABAニューロンとCBニューロンのシナプス形態に有意差が認められ、GABAニューロンとCBおよびCRニューロン間でシナプス小胞の大きさに有意差がみられた。以上の結果から、同じ抑制性ニューロンでも含有する化学物質によってシナプスの形状が異なり、機能的特性が異なることが示唆された。― 神経・運動器 ―S24川 崎 医 学 会 誌

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