医学会誌 第41巻 補遺号
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研究課題名:コレステロールトランスポーターNPC1L1によるα-トコフェロールの細胞内取り込み研究代表者:上敷領 淳(福山大学 薬学部薬学科)【目的】Niemann-pick C1 Like 1(NPC1L1)は、コレステロールトランスポーターであり、ヒトでは小腸や肝臓に発現している13回膜貫通タンパク質である。細胞外のN末端領域にコレステロール結合ドメインを持っており、NPC1L1にコレステロールが結合すると、コレステロール-NPC1L1複合体のエンドサイトーシスが起こることでコレステロールの取り込みが行われる。また、NPC1L1はコレステロールだけでなく、α-Tocopherol(vitaminE)の細胞内取り込みにも関与するという報告もある。しかし、α-Tocopherolの細胞内への取り込みがコレステロールと同様の機構で行われているか否かに関しては不明な点が多い。そこで今回、我々はα-TocopherolのNPC1L1への結合、及び結合後に起こる細胞内への取り込みに関して検討を行った。【方法】①α-TocopherolとNPC1L1の結合:NPC1L1コレステロール結合ドメインと[3H]コレステロールとの結合がα-Tocopherolによって阻害されるか否か検討を行った。②NPC1L1によるα-Tocopherolの細胞内取り込み:ラット肝細胞がん由来培養細胞CRL1601にNPC1L1をGFP融合体(NPC1L1-GFP)として安定発現させ、α-Tocopherol投与によってNPC1L1-GFPが細胞内に取り込まれるか否か検討を行った。【結果・考察】コレステロール結合ドメインへの[3H]コレステロールの結合がα-Tocopherolによって阻害されることが確認された。また、NPC1L1発現細胞を用いた実験から、α-Tocopherolの投与によってNPC1L1が細胞内に取り込まれることが確認された。以上のことからNPC1L1はコレステロールだけでなくα-Tocopherolの吸収にも関与することが示唆された。研究課題名:プライベート音空間を有する看護支援スマートベッドシステム研究代表者:仲嶋 一(福山大学 工学部スマートシステム学科) 看護師の疲労は医療ミスの一因であり、看護師の負荷軽減が重要な課題となっている。中でも夜間の頻繁なナースコールは疲労を増大させると共に、相部屋においては看護師と患者とのやり取りが他の患者の安眠の妨げになっている。そこで我々は、保有技術である音波制御技術と信号解析技術を活かし、対象患者のみに閉じたコミュニケーション手段でナースコールの負荷を軽減するスマートベッドシステムを提案する。 本システムは、患者の耳元でのみ可聴な音場制限スピーカと患者の小さな音声を選択増幅する音源特定マイクを装着してプライベートな音空間を形成するスマートベッドと、患者の音声を認識し看護師に連絡するコンピュータ・通信システムで構成される。 本システムでは、ナースコールとして患者のつぶやきを音源特定マイクでピックアップし、コンピュータに伝送する。コンピュータは音場制限スピーカにより他の患者に迷惑をかけることなく対象患者と対話し、音声解析・認識により患者の要望や切迫度合を判断して看護師の携帯情報機器に連絡する。これにより看護師は患者のプライオリティに応じた効率的な対処が可能となり負荷低減されると共に、仮に看護師が他の患者の対応で塞がっている場合でもシステムが患者とのコミュニケーションを確保することで患者の不安軽減が可能である。 また、音源特定マイクにより患者の動きを把握することで、夜中の徘徊行動の事前把握にも展開可能である。S79

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