医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-48:Mycoplasma fermentans感染gp130F759における関節炎発症促進機構の検討研究代表者:矢作 綾野(免疫学) IL-6ファミリーサイトカインの受容体gp130に点変異を導入したノックインマウスgp130F759は関節リウマチ(RA)様の自己免疫性関節炎を自然発症する。我々は昨年度プロジェクト研究までに、RA発症との関連性が報告されているMycoplasma fermentans (Mf) をgp130F759に感染させると非感染群に比べ関節炎発症が早期化し、感染1ヶ月後には免疫系細胞増加、IL-6の発現変化を伴って滑膜組織の増生をもたらすことを報告した。 今回Mf感染gp130F759の関節炎発症機構を探るため、感染早期における滑膜組織の細胞分画について解析した。感染前と比較し、感染3日後では細胞の割合、絶対数に変化が認められないものの、10日後には好中球絶対数の増加を認めた。しかしながら、関節炎は感染1ヶ月後まで発症しなかった。一方、加熱処理したMfの経尾静脈的投与では発症しないことから、耐熱性PAMPS(pathogen-associated molecular patterns)の関与は否定された。RAとの関連性が報告されていないEscherichia coli K12株の経静脈的感染では関節炎は誘導されなかった。以上により、Mf感染gp130F759では好中球の増加を端緒として関節炎の発症が誘発される事、感染による関節炎誘導能はM.fermentans特異的であることが明らかとなった。26基-82:3次元培養法を用いた多層性滑膜線維芽細胞の特性について研究代表者:五十嵐 英哉(免疫学) 今回、ヒト滑膜線維芽細胞株MH7Aを用いて、①Nanoculture plate(Scivax)、②Prime Surface(住友ベークライト)、③Nunclon Sphera(Fisher)、④FCeM(日産化学)の4通りの方法で3次元培養法を試みた。この中で、MPCポリマーコーティングによりスフェロイド形成を促進する③Nunclon Spheraが最も簡便、かつ大量のスフェロイドを得られることがわかった。細胞増殖能は、従来のプラスチック培養皿に接着させる2D培養より、浮遊系の3D培養のほうが高かった。また炎症性サイトカインであるTNFα、IL-1β、IL-6の転写は2D培養より3D培養のほうが明らかに高かった。一度3D培養したものを、再度2D培養に戻すと、これらの炎症性サイトカインの転写が通常の2D培養時程度に戻ることから、培養プラスチックとの接着により、例えばインテグリンを介したシグナルが炎症性サイトカインの転写に抑制的に働く可能性、あるいはスフェロイド形成時の、細胞同士の接着が転写に促進的に働く可能性が示唆された。そこでキレート剤であるEGTAを用いて、カルシウム依存性の接着分子同士によるホモ型接着を阻害すると炎症性サイトカインの転写が低下したことから、スフェロイド形成時の細胞の接着が炎症性サイトカインの転写亢進に重要であることがわかった。S68川 崎 医 学 会 誌

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