医学会誌 第41巻 補遺号
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26ス-4: スギ花粉症におけるスギ・ヒノキ花粉飛散時期の症状と下鼻甲介粘膜Histamine receptor H1 発現について研究代表者:雜賀 太郎(耳鼻咽喉科学)【はじめに】スギ花粉症は現在増加しており、スギ花粉だけでなく、西日本は特にヒノキの影響により症状が増悪する場合も多い。治療においては薬物療法が中心であるが、根本的治療法としてアレルゲン免疫療法が注目されている。当院はスギ花粉飛散量よりヒノキが多い地域でスギ皮下免疫療法を行っている。今回、スギ皮下免疫療法におけるヒノキ花粉飛散時期の効果を検討したので報告する。【対象・方法】当院を受診した免疫療法および初期療法患者に対して文書にて同意を得られ、症状アンケート、採血検査を施行した47名を対象とした。免疫療法群は花粉飛散前に当院外来にて皮下免疫療法を施行した患者21名と初期療法群は花粉飛散ピーク前1週間前に初期療法を開始し、花粉飛散ピークに来院した患者を対象とした。【結果・考察】2014年は3230個/cm2と平年並みの飛散量であった。スギ飛散期には初期療法群よりも免疫療法群で症状が軽かった。ヒノキとスギの飛散期を比べると、JRQLQで症状スコアの増悪はなかった。血清学的には初期療法群ではスギ特異的IgE抗体価は2月に比べて4月において有意な増加を認め、ヒノキも同様であった。一方、免疫療法群においてスギ特異的IgEでは増加はなく、ヒノキで有意に増加を示した。したがって、スギ皮下免疫療法においてヒノキ飛散期に臨床的には効果を示すが、ヒノキ特異的IgE産生において抑制効果は低いことが示唆された。26基-4:ダニ抗原誘発気管支喘息の新規抗原特異的免疫療法の開発研究代表者:加藤 茂樹(呼吸器内科学)【背景】吸入ステロイド薬等の開発により気管支喘息(喘息)の治療は著明に進歩したが、これらは全て対症療法であり、本疾患を治癒に導くものではない。喘息の根治療法としてダニアレルゲン特異的免疫療法が試みられ、副作用の軽減の目的から舌下免疫療法が注目されている。【目的】ダニ抗原誘発マウス慢性喘息モデルを作成し、本疾患モデルに対してダニアレルゲンエキスの舌下免疫療法を試み、喘息病態における舌下免疫療法の有効性を検討する。【方法】BALB/cマウスにダニ抗原を週5日5週間、合計25回経気道的に投与し、ダニ抗原誘発マウスアトピー型慢性喘息モデルを作成する。次に、この疾患モデルに対してダニアレルゲンエキスを週5日、2週間舌下投与し、ダニアレルゲン特異的舌下免疫療法を試みる。喘息病態の評価は(1)即時型気道反応、(2)気道過敏性試験、(3)気管支肺胞洗浄(BAL)液中の炎症細胞数の解析、および(4)血清中のダニ抗原特異的IgE抗体価の測定により行う。【結果】本喘息モデルでは(1)の上昇(2)の亢進(3)の増加(4)の上昇を認めた。慢性喘息モデルに対して舌下免疫療法を行うことにより(1)の低下(2)の改善(3)の減少(4)の低下する傾向を認めた。【考察】ダニアレルゲンエキスを用いたSLITは、ダニ抗原誘発性喘息の病態を改善することが示唆されたが、その有効性は限定的でありさらなる改良が必要である。S67

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