医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-38:ヘルペスウイルス感染症における皮膚病変部の局所反応を利用した宿主免疫状態の評価研究代表者:山本 剛伸(皮膚科学) (再発性)単純ヘルペス、帯状疱疹はそれぞれ単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に対する細胞性免疫が低下した時に発症する。HSV・VZV感染症は、宿主の免疫状態によって臨床像が大きく異なる。しかし臨床像と宿主免疫状態の関連についての研究は、まだ不十分である。 帯状疱疹の臨床型を細分化し、その宿主免疫状態の関連性について検討した。その結果5種類に細分化されることが判明した。つまり小水疱とともに発赤が限局して集簇するタイプ(正常免疫状態)、大型の水疱が主体で炎症細胞浸潤の乏しいタイプ(免疫抑制剤使用中の患者)、大型の水疱とともに強い炎症細胞浸潤を伴うタイプ(低用量ステロイド剤内服中の患者)、表皮・真皮に強い壊死を伴うタイプ(悪性腫瘍合併例)、汎発性VZV感染症(骨髄移植後などの極端な免疫低下)の5型に分類される。免疫抑制者に発症した帯状疱疹は炎症細胞の浸潤をきたしにくく、Bax/Bcl-2・Fas/FasLの系でアポトーシスの機構不全があることがわかった。 全身の免疫状態を評価するために、末梢血単核球中のEBVゲノムを経時的に測定したところ、宿主の免疫状態を反映して、ゲノム数の増減が確認できた。 宿主免疫状態により、水疱のサイズ、病変部に対する炎症細胞浸潤の程度が異なり、重症度に影響している。また、全身の免疫状態を把握するために、末梢血単核球中のEBVゲノム測定は有益である。26ス-1:HAM患者由来完全ヒトモノクローナル抗体の樹立とその応用に関する研究研究代表者:塩浜 康雄(微生物学) ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1: HTLV-1)は、感染者の約5%にHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy: HAM)や成人T細胞白血病(Adult T-cell leukemia:ATL)を引き起こすレトロウイルスであり、母乳による母子間垂直感染や性交渉による水平感染により伝播する。国内には未だ約108万人もの感染者が存在することから、その感染予防法やHTLV-1関連疾患の治療法開発は重要な課題である。HAM患者血清中にみられる抗HTLV-1エンベロープ蛋白(gp46)抗体は、HTLV-1の中和反応に加え、免疫細胞による抗体依存性細胞傷害(ADCC)により効果的にHTLV-1感染細胞を排除することが明らかにされている。また、HAM患者血清中におけるHTLV-1蛋白類似構造に対する自己抗体は、HAM病態における神経傷害との関連が示唆されており、これらの抗体がHTLV-1感染予防や新規治療法開発の有用な資源となることが期待される。本研究は細胞融合法によるヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマやEBウイルスを用いたB細胞不死化技術により、HAM患者よりヒト抗体を恒常的に産生する細胞株を得る方法を確立し、治療法開発に有用な完全ヒトモノクローナル抗体樹立に関する基盤構築を行った。S63

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