医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-13: Gd-EOB-DTPA(肝細胞特異性造影剤)造影MRIを用いた肝細胞癌の発癌形態に関する検討研究代表者:玉田 勉(放射線医学(画像診断1))【目的】肝細胞癌(HCC)は、慢性肝炎や肝硬変を背景としてde novoと多段階発育による発癌経路が提唱されている。しかしながらde novo発癌の頻度や臨床的な特徴は明らかにされていない。そこで、慢性肝疾患患者の連続したGd-EOB-DTPA(EOB)造影MRIを用いてde novo 多血性HCCの臨床およびMRI所見の特徴を明らかにする。【方法】対象は、慢性肝疾患を伴った240症例、1007検査の中で、肝細胞性結節のない初回検査からの経過観察によって新たに出現した多血性HCCを有した16症例、17結節であった。検討項目は、年齢、性別、慢性肝疾患の原因、肝障害度、HCCの治療歴、腫瘍サイズ、多血性HCC検出までの期間、多血性HCC出現前の乏血性肝細胞相低信号結節(high risk nodule)の有無、腫瘍内の脂肪成分の有無および病変の拡散強調像、T2強調像および肝細胞相の信号強度とした。【成績】多血性HCC17病変の中で、12病変(71%)は多血性HCC出現までにhigh risk noduleを伴わないde novo発癌群、5病変(29%)病変はhigh risk noduleを伴った多段階発癌群であった。de novo発癌群におけるHCCの治療歴の頻度(92%)は、多段階発癌群(20%)に比して有意に高かった(P=0.013)。また多血性HCC出現までの期間は、de novo発癌群(平均291日)は多段階発癌群(平均509日)より有意に短かった(P=0.035)。さらにde novo発癌群における脂肪成分を伴った病変の頻度(0%)は、多段階発癌群(40%)に比して低かった(P=0.074)。【結論】de novo多血性HCCは、多段階発癌によるそれに比して、急速な発育、HCCの治療歴を有するおよび脂肪成分のない病変を特徴とする。26ス-2:肝動脈化学塞栓療法におけるドキソルビシンとミリプラチンの有用性の比較検討研究代表者:富山 恭行(肝胆膵内科学)【目的】肝細胞癌(HCC)に対するconventional TACE(cTACE)における抗癌剤の選択は一律ではなく,その使い分けも明らかではない.そこでミリプラチンTACE(MPT群)とドキソルビシンTACE(DXR群)の治療成績からcTACEの適応と限界を検討する.【方法】対象は2005年から2014年に施行した初回cTACE症例のうち,抗癌剤ローテーションを行わず単一薬剤で治療を繰り返したMPT群88例とDXR群74例の計162例を対象とした.抗癌剤の差異が及ぼす影響を明らかにするため,propensity score matching(PSM)したMPT群34例とDXR群34例の計68例における治療効果,TE4持続率,生存率(OS),無増悪期間(TTP),TACE不能に至るまでの期間(TTUP)をカプランマイヤー法で算出した.予後因子はCox比例ハザード,完全奏効(TE4)因子はロジスティック回帰を用いて多変量解析した.治療効果はTACE後1ヵ月で肝癌直接効果判定基準を用いて判定した.【成績】全162例の検討では,MPT群とDXR群のTE4/TE3/TE2/TE1はそれぞれ26/35/24/3,34/20/15/5,TE3+TE4 (奏効)率は69.3%,72.9%であった.奏効率,OS,TTP,TTUP,TE4持続率に両群間で有意差は認めなかったが,DXR群ではTE4率が有意に良好であった.PSM後の検討では,奏効率,OS,TTP,TTUPに両群間で有意差は認めなかったが,DXR群ではTE4率(55.9% vs. 23.5%,P=0.006)とTE4持続率(median;9.0ヵ月 vs. 3.0ヵ月,P=0.044)がMPT群と比較して有意に良好であった.多変量解析の結果,予後因子はCLIP score≦2(HR:0.11,P<0.001),ALB(HR:0.29,P=0.028),CRP(HR:3.44,P=0.004),TE4因子は腫瘍数≧4個(OR:9.13,P=0.013)とMPT群(OR:4.52,P=0.008)が有意な不良因子であった.【結論】MPT群はDXR群と比較してTE4率およびTE4持続率が有意に低く,塞栓効果と局所制御を期待したcTACEには,DXRが適している可能性が示唆された.S55

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