医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-42: 上部消化器癌患者に対する化学療法時のカルニチン濃度の変化と栄養状態および自覚症状との関連に関する研究研究代表者:松本 英男(消化管外科学)背景:カルニチンは、脂肪酸の代謝に重要な役割を担うビタミン様物質である。抗癌剤投与で尿細管でのカルニチンの再吸収と組織移行を促すカルニチントランスポーターOCTN2(organic cation transporter novel)の発現量が低下し、カルニチンの血中濃度が低下すると報告されている。すなわち、進行癌における化学療法時にはカルニチン欠乏が生じる可能性が高く、これにより栄養状態の低下と自覚症状の増悪が起きることが考えられる。目的:上部消化管癌でシスプラチンを含む抗癌剤投与時の、血清カルニチン濃度と自覚症状・栄養状態の変化を測定しこの仮定を検証する。方法:化学療法施行前にカルニチン測定、栄養状態の評価(血清TP、Alb、リンパ球、ChoE、T.Chol、とInBody)、アンケート(EORCT-30+OES25,STO25)を行い、そののち継続する化学療法の直前にカルニチン測定、栄養状態評価、アンケートを行う。結果:化学療法を3回行った5例において、カルニチン値は前値52.4±15.1μmol/L、2回開始前43.9±13.5μmol/L、3回開始前には40.3±18.3μmol/Lと有意差に低下した(p=0.000381)。またカルニチンの変動はChoEの変動に一致した(p=000394)。Inbody、自覚症状についてはデータ集積し解析中である。結論:連続する化学療法ではカルニチンが低下し、これにより栄養障害が起こる可能性が示唆された。26挑-9: 大腸癌化学療法の5-FU持続点滴レジメンにおいて、5-FUTDM(Therapeutic Drug Monitoring)によって5-FU投与量を調節する個別化医療構築のための基礎的研究研究代表者:奥村 英雄(消化器外科学)背景:一般的には、化学療法のために持続投与されたときに、5-フルオロウラシル(5-FU)の血中濃度は一定であると考えられている。本研究の目的は、持続投与中に5-FUの血中濃度は、一定であることを確認する。患者と方法:大腸癌患者、男性6人と女性3人の臨床試験の同意を得られた9人を対象とした。4人にFOLFIRI(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、イリノテカン)と5人にFOLFOX(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン)を投与した。5-FUは、46時間連続して(400ミリグラム/ m 2)投与し、採血を、5-FUの投与開始後0.25、1.5、3、6、9、12、18、24、32、及び46時間後と投与終了後1、1.5時間後に行った。 5-FUの濃度は、免疫測定法及びガスクロマトグラフィー質量分析(GC / MS)法を用いて評価した。結果:5-FUの濃度は、個々のより大きい3倍の変化で、時間をかけて大幅に変動し、パターンは一定ではなかった。結論:5-FUの血中濃度は変動し、様々なパターンを示すため、投与量は体表面積に基づいてされるべきではなく、 5-FUの投与量を決定するための新しい個別の方法が開発されるべきである。-5000500100001020304050CaseCase2Case3Case4Case5S52川 崎 医 学 会 誌

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