医学会誌 第41巻 補遺号
55/90

26基-100:消化管術後のQOLとHigh Resolution Manometryを用いた食道機能評価研究代表者:遠迫 孝昭(消化管外科学)はじめに 当科では、早期がん症例に対して、LESと迷走神経肝枝・腹腔枝を温存し、胃全摘あるいは噴門局所切除術を行う機能温存手術を行ってきた。この術式は、LES機能温存により逆流を防ぐことでQOLの改善を図ることを目的としている。High Resolution Manometry (HRM) は、LES機能を含めて食道のmotilityを一度に評価できる優れた機能評価法である。我々は、HRMを用いてLES・神経温存術式のLESを含む食道機能評価を試みた。対象・方法: LES・神経温存を行った胃全摘例8例、LES・神経温存噴門部分切除術8例、HRMを測定した。また、神経温存のできていない胃全摘例 4例も同様に測定した。結果: LES・神経温存胃全摘8例のうちLES機能の温存が確認されたのは7例でありこの7例は食道にも正常の蠕動を認めた。integrated relaxation pressure (IRP)、Distal contractile integral (DCI)、Contractile front velocity (CFV)などのパラメーターも正常であった。またLES・神経温存噴門部分切除の8例では、LES圧の温存が6例に確認されたが、1例はWeak contractionで1例はFailed contractionであった。一方、非温存の胃切除例ではLES圧は認めず、2例はweak contractionであった。まとめ HRMを用いることで術後の食道機能を評価でき、術後の経口摂取の評価につながる可能性があると考えられた。26基-23:2cm以下の胃癌における臨床病理学的検討~粘液形質、細胞増殖能を中心に~研究代表者:鎌田 智有(消化管内科学)背景と目的:胃癌の治療方針は外科的または内視鏡的治療などがすでに確立されているが、その選択には病変の大きさ、組織型、深達度や転移の有無などの術前診断が非常に重要である。臨床的に病変が大きいが粘膜 (m)内に留まるもの、病変が小さいにもかかわらず粘膜下層 (sm)以深に浸潤する病変などその生物学的悪性度は一様ではない。対象:過去3年間に当院で胃癌の治療を受け、病理学的検討が可能であった336例を対象とした。方法:対象症例を深達度別にm癌とsm以深癌の2群に分類した後、m癌でも腫瘍径が40mm大を超えているものを「大きくて浅い癌(A群)」とし、sm以深癌でも20mm大以下のものを「小さくて深い癌(B群)」と細分類した。A群及びB群での患者背景、発生部位、肉眼形態、組織型などについて後向きに検討した。成績:リンパ管侵襲と静脈侵襲はB群でのみに認められた。B群では内視鏡的に高度な萎縮性胃炎を多く認める傾向があり、Brinkman index がA群より高値であった。癌の発生部位は両群ともにM領域が多かったが、A群では小彎の病変が、B群では大彎の病変が多かった。なお、粘液形質、細胞増殖能に関しては現在研究進行中である。結論:内視鏡的に高度な萎縮性胃炎を背景に持ち、胃体部大彎に発生する胃癌は大きさが小さい割に深達度が深い事があるため、その診断や治療の際には十分な注意が必要と考えられた。S51

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です