医学会誌 第41巻 補遺号
52/90

26基-84: 分子マーカーから見た非小細胞肺癌の化学療法に対する耐性獲得と治療効果に関する研究研究代表者:中田 昌男(呼吸器外科学)【背景】局所進行型NSCLCの標準的治療法は化学放射線療法であるが、切除可能な症例においては術前治療として化学(+放射線)療法後に切除を行う場合がある。術前治療により病理学的に腫瘍が残存しない(pCR)症例では良好な予後が期待できることが明らかとなっている。しかし、術前治療で腫瘍が縮小し(PR)完全切除が行えた症例であっても、しばしば再発をきたす。その原因として化学療法に対する腫瘍の耐性の獲得が考えられる。われわれは耐性の機序の一つに腫瘍細胞の幹細胞化が関与していると考え本研究を計画した。【対象と方法】川崎医科大学附属病院で平成20年3月から平成26年1月までに術前導入化学療法後に切除を行った非小細胞肺癌18例を対象とした。術前化学療法前後の腫瘍部の病理検体を用いて、癌幹細胞マーカーであるCD44、CD24、PDGFR、ALDH1A1の免疫染色を行い、各々の発現変化と化学療法の治療効果ならびに予後について比較検討した。【結果】病理学的治療効果(Ef)と癌幹細胞マーカーの発現には関連は認めなかった。一方、Ef2~3の化学療法奏効例の中で再発を来した2例はいずれもALDH1A1の発現が化学療法後に増強した症例であり、Ef1を含めてALDH1A1の発現増強症例は4例ともに再発していた。今後症例数の増加とともに経過観察を続けていきたい。26基-85:肺がん組織における免疫抑制分子の同定とその制御研究代表者:大植 祥弘(呼吸器内科学)【背景】近年の悪性黒色腫を先導とした研究で、宿主免疫応答はPD-1/PD-L1といった免疫抑制分子で制御されていることが明らかになり、このような分子を標的とした抗体医薬を用いて免疫抑制を解除する新たな免疫療法が成果を挙げている。今回、肺癌における免疫抑制分子の発現を解析しがん局所での免疫制御機構を明らかにした。【方法と対象】肺癌組織マイクロアレイで366例(腺癌194例、扁平上皮癌112例、小細胞肺癌17例、その他11例、転移性肺腫瘍32例)の検体を用いPD-L1およびGalectin-9の免疫腺組織染色を行った。【結果】PD-L1は主に細胞膜と細胞質で、Galectin-9は細胞質が染色された。腺癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、その他、転移性肺腫瘍でのPD-L1陽性頻度は、49.0%、18.6%、58.3%、36.4%、50.0%であり、Gal-9陽性頻度は、31.4%、9.3%、25.0%、18.2%、43.8%であった。【考察】肺腺癌において、PD-L1、Gal-9の陽性頻度は高く肺癌局所で宿主免疫応答の抑制に関与している可能性がある。今後、腫瘍浸潤リンパ球等を用いて更なる解析を進める予定である。S48川 崎 医 学 会 誌

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です