医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-26:細胞内での鉄の動態を探る研究代表者:岸 文雄(分子生物学2) 生体内の鉄量は厳密に調節されており、鉄過剰により引き起こされる組織障害は、多くの疾患の原因として考えられている。これまでDMT1により細胞内に取込まれたFe2+が、如何にして安全かつ適切に輸送されているかについては不明であった。 本研究では、DMT1により取込まれたFe2+を直接受け取る分子があるという仮説のもと、DMT1結合分子の探索を行った。その結果、PCBP2を結合分子として見出すことに成功した。吸収上皮細胞頂端膜にはDMT1が発現し、食餌中の鉄を取込む。DMT1発現細胞に、Fe2+を取込ませると、細胞内鉄量の増加、フェリチン蛋白質の増加、TfR1のmRNAの減少が見られる。しかし、DMT1およびPCBP2をノックダウンすると、これら分子の変動はなくなり、細胞内の鉄量の増加も観察されない。多くの細胞ではTfを介したエンドサイトーシスにより鉄が取込まれ、DMT1を介してエンドソーム内から細胞質へと輸送される。DMT1またはPCBP2をノックダウンした細胞にTf鉄を取込ませると、DMT1及びPCBP2ノックダウン細胞ではミクロソーム分画に鉄が集積するとともに、細胞質内へ輸送される量が有意に低下した。 以上より、DMT1はPCBP2へと鉄を直接受け渡しており、PCBP2は鉄の細胞内への取込みに重要な役割を担っていることが明らかにした。26基-76: コルチゾール合成・代謝・作用機構についての研究  -血中ステロイド分画同時測定による評価-研究代表者:宗 友厚(糖尿病・代謝・内分泌内科学) コルチゾール(F)は、活性型グルココルチコイド(GC)の代表として、糖質のみならず脂質・蛋白質・核酸といった基本物質の代謝や循環調節を司る。その産生はフィードバック調節の代表である視床下部-下垂体-副腎(HPA)系により巧妙に調節されるほか、腎11βHSDタイプ2によるコーチゾンへの不活化や、広汎に存在する11βHSDタイプ1及びH6PDによるFへの再生(賦活化)、など受容体前の局所代謝も重要であり、GC作用を総体的に把握するためには産生~代謝の各ステップを反映する指標が必要である。本研究は、従来法で問題とされた交叉反応や測定誤差を克服できるLC-MS/MS法を用いて、中間生成物である複数ステロイドの血中濃度を同時に定量し、各々の合成酵素活性(product/precursor比)やF~E間代謝状態の指標も加え、様々な検討を進めることが目的である。耐糖能正常者に於ける検討では、DHEA<F<S<17OHP5の順に強くACTHと正相関し、酵素活性も11β-hydroxylase<3βHSD<17,20-lyaseの順に強くACTHと負相関することを昨年報告した。今回は臨床的指標との関連につき検討を進めた。収縮期・拡張期血圧共に、ACTHやFとは有意相関はなかったが、Sや21-hydroxylase活性と正相関した。脂質に関して、F・PRAはHDL-Cと正に相関し、P4がTChol・LDL-C・HDL-Cと正に相関した。糖代謝に関して、FPGは17,20-lyase活性や11-oxoreductase活性と負相関、FIRI・HOMA-RはFや11-oxoreductase活性と負に相関しており、健常者に於いてフィードバック機序の存在が示唆される。GC作用の各ステップは血圧調節や糖脂質代謝と多様に関連する。― 代謝 ―S42川 崎 医 学 会 誌

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