医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-92: 慢性腎臓病(CKD)患者における心臓足首血管指標(CAVI)と腎組織細動脈硬化病変との関連性の検討研究代表者:浪越 為八(腎臓・高血圧内科学)【目的】慢性腎臓病患者では、高血圧は腎血管を含めた血管の動脈硬化進展に大きく寄与する。しかし、中心血圧を含めた血管機能が腎組織細動脈の硬化性病変に与える影響は検討がなされていない。我々は、血管機能の指標が慢性腎臓病患者の腎組織細動脈硬化病変や腎予後と関連しているのかを検討した。【方法】当科で腎生検を施行した20歳以上の患者55名で検討した。中心血圧、心臓足首血管指標、腎超音波検査で測定した腎血管抵抗値の血管機能指標と、腎生検組織から評価した腎組織細動脈硬化病変、糸球体濾過値、アルブミン尿値との相関を検討した。【結果】中心血圧は腎組織細動脈硬化病変、アルブミン尿値と弱いながら相関を認めた。心臓足首血管指標は糸球体濾過値、アルブミン尿値と強い相関を認めた。腎血管抵抗値は糸球体濾過値、アルブミン尿値と相関を認めた。【結語】血管機能指標では、心臓足首血管指標が最も強く腎予後予測因子である糸球体濾過値、アルブミン尿値と相関していた。唯一中心血圧のみ、腎組織細動脈硬化病変と相関していた。26基-5:乳癌内分泌療法抵抗性発生のメカニズムの解明とその克服を目指した基礎研究研究代表者:紅林 淳一(乳腺甲状腺外科学) 乳癌内分泌療法抵抗性発生は、臨床の場において大きな問題となっている。内分泌療法抵抗性発生のメカニズムは、不明な点が多い。我々は、「エストロゲンによる癌幹細胞 (CSC)の制御機構の破綻」が、内分泌療法抵抗性発生の一因となっているとの仮説を立てた。そこで、1) エストロゲン高感受性乳癌細胞株と低感受性細胞株において、CSCとnon-CSCに分離した後、エストロゲン添加により発現が有意に変化する遺伝子をmRNA発現マイクロアレイで解析し、CSCの制御に関わることが予想される複数の遺伝子を同定した。候補遺伝子として、ARG、betacellulin、CXCL-12が抽出された。2) これら3候補遺伝子は、エストロゲンによる発現の増加や細胞増殖促進効果と良く相関したが、CSCの制御とは全く相関しなかった。同時期に、「幹細胞制御機構の要となるHedgehogシグナル伝達経路のGli1が、エストロゲン依存性乳癌細胞のエストロゲンによるCSC制御において重要な役割を果たしている」との研究結果が別のグループから報告された。マイクロアレイを用いた解析やその後行った定量RT-PCRによる検討において、Gli1がエストロゲンによりnon-canonical pathwayを介して発現が促進されることが確認された。Hedgehogシグナル伝達阻害薬GANT61がエストロゲンによるGli1の発現やCSC増加作用を阻害することも確認された。また、乳癌内分泌療法の効果を増強する目的で、抗癌化学療法薬エリブリンと抗エストロゲン薬との抗腫瘍効果やCSC制御に関する相互作用を検討し、両薬剤の相加的な効果が示された。― 臨床を基盤とする研究 ―S19

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