医学会誌 第41巻 補遺号
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26基-39:エフェクター/メモリー亜集団に注目したCTL機能への石綿曝露の免疫機能影響の解析研究代表者:武井 直子(衛生学) 抗腫瘍免疫機能への石綿曝露影響は不明な部分が多い。これまでに申請者らは混合リンパ球培養法を用いたアロ刺激分化誘導時の石綿曝露が、CD8+T細胞の増殖低下を伴いCTL分化抑制を示すことを報告した。本研究では、エフェクター/メモリーCTL亜集団に注目した石綿曝露影響の解析を目的として石綿曝露亜株を作成すると共に、CTL機能への石綿曝露機能影響の機序解析を目的としてT細胞増殖因子であるIL-2の添加培養実験を行った。5 μg/mlの石綿添加培地中で長期間培養維持しヒトCD8+T細胞株、EBT-8の石綿曝露亜株を作成した。固定、浸透化後、蛍光標識抗体で染色し、granzyme B、perforin、及びINF-γの発現をフローサイトメトリーで測定した。現在、測定データの解析および再現性の確認を進めている。混合リンパ球培養を5 μg/mlの白石綿添加培地中で行い、2日目にIL-2を1 ng/ml濃度で添加した。IL-2は、石綿曝露によるCD8+中CD45RA+細胞比率の減少抑制とCD45RO+とCD25+細胞比率の増加抑制を回復しなかったが、対照群と同程度の細胞傷害性の回復を誘導した。CFSE染色結果から、IL-2添加により非増殖CD8+中granzyme B+増加が誘導されていることが分かった。以上の結果は、IL-2添加では石綿曝露下時のCTL分化抑制が回復しないことを示す。26基-75:骨代謝制御因子SH3BP2の欠損が関節炎マウスの骨破壊に及ぼす影響研究代表者:守田 吉孝(リウマチ・膠原病学)【目的】関節リウマチでは、生物学的製剤投与にて過剰な炎症性サイトカインを制御してもなお関節破壊が進行していく患者が存在し、免疫系制御とは独立し、遺伝的に制御された破骨細胞分化・活性化メカニズムが、治療抵抗性の骨破壊進行に関与している可能性も考えられる。チロシンキナーゼに結合するアダプター蛋白質であるSH3BP2は、そのアミノ酸変異(機能獲得型変異)が炎症性顎骨破壊を特徴とする遺伝性疾患チェルビズムの原因であることが明らかとなり、骨代謝を制御する蛋白として注目されている。本研究ではSH3BP2欠損(SH3BP2 KO)マウスを用い、関節炎モデルマウスにおけるSH2BP2の役割を検討した。【方法と結果】SH3BP2 KOマウスをヒトTNFトランスジェニックマウスと交配したところ、関節炎の重症度は変化しなかったが骨破壊が軽減した。骨髄マクロファージを用いたin vitro解析ではSH3BP2欠損は破骨細胞分化・機能を抑制していた。また、SH3BP2 KOマウスをII型コラーゲン(CII)で免疫し関節炎を誘導したところ、コントロールマウスと比較して関節炎の発症は著明に抑制された。抗原依存性のリンパ球の増殖能やIL-17、IFNγの産生は、SH3BP2 KOマウスとコントロールで有意な違いはなかったが、血清中の抗CII抗体濃度はSH3BP2 KOマウスで有意に低下していた。【結論】SH3BP2は破骨細胞分化能のみならず抗体産生を調節することで、関節炎モデルマウスの骨破壊に重要な役割を果たしている。SH3BP2は関節リウマチにおいて有望な治療標的となるかもしれない。― 基礎医学的手法を用いた病態解析 ―S17

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