医学会誌 第41巻 補遺号
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26特-3:免疫抑制解除型新世代XAGE-1b長鎖複合ペプチドワクチン肺癌ワクチンの基盤開発研究代表者:岡 三喜男(呼吸器内科学) 肺癌は世界の癌死の第一位で本邦でも増加の一途にあり予防と新規治療法の開発は急務である。近年、悪性黒色腫を先導に肺癌でも抗体免疫療法の道が開かれたがその効果は未だ限定的であり、肺癌でも強力な免疫誘導効果をもたらす治療法の開発が必要である。 我々は、肺癌のうち最も頻度の高い肺腺癌に発現するXAGE1抗原に注目し肺癌患者における宿主免疫応答を解析してきた。XAGE1はがん・精巣抗原で、成人正常組織では精巣にしかその発現を認めず、肺腺癌で約40%に発現を認める。肺癌患者でXAGE1に対する抗体反応の有無を解析したところ、肺癌患者の血清中にXAGE1に対する特異抗体を検出した。その後の解析で、XAGE1発現進行期肺腺癌の約半数でXAGE1特異抗体を産生することが判明した。またXAGE1抗体陽性の患者よりXAGE1抗原特異的なCD4およびCD8 T細胞を検出し、複数のエピトープの同定を行い、XAGE1は非常に免疫原性の強いがん・精巣抗原であることを明らかにした。さらにXAGE1に対する抗体反応を免疫バイオマーカーとして用い、肺腺癌の自然経過を前向き研究により観察し、抗体反応陽性患者は予後が延長することを明らかにした。 また、肺癌の局所においては抗腫瘍免疫を抑制する制御性T細胞の重要性を明らかにし、平成24年度厚生労働科学研究費補助金により、制御性T細胞を除去することで抗腫瘍免疫を賦活する医師主導治験を実施した。これらの成果は、川崎医科大学から、日本から、世界へ発信する画期的なデータとなった。 本研究によって、XAGE1抗原の強い免疫原性をがんワクチンとして用い、局所における宿主免疫応答の抑制を解除する抗体医薬等と併用し、世界初、日本発の免疫調節薬による肺がん治療の推進を行う。24特-1:5-アミノレブリン酸によるシスプラチン腎毒性抑制作用の臨床応用研究代表者:猶本 良夫(総合外科学)【目的】食道癌、胃癌や肺癌などの標準化学療法に広く用いられているシスプラチンは強い腎毒性を持ち、腎障害予防目的に大量輸液・利尿剤による強制利尿のために入院を要す。加えて悪心・嘔吐によるQOL低下も問題であった。従来1週間程度の入院と大量輸液により腎障害予防を行ってきたレジメンを、外来で短時間に行える様、我々は多施設共同研究「切除不能または再発胃癌患者に対するshort hydration法を用いたS-1+シスプラチン)の認容性試験」を進行中である(平成27年2月にて予定症例数登録完了)。5-アミノレブリン酸(ALA)は低分子δアミノ酸で、ヘム化合物の前駆体である。ヘムはヘモグロビンやチトクローム、カタラーゼなどのヘムタンパク質補欠分子族として多くの重要な生理作用を示す。本研究はALAの生理活性のひとつである腎障害防止効果を臨床応用し、新規腎障害予防法の確立を目指す。【非臨床研究】ALAはシスプラチン誘発腎障害動物モデルにおいて腎機能障害を防止することが近年報告された。従来の大量補液とALA投与が同様の機序で腎障害を防止し得るかを検索。【臨床研究】シスプラチン誘起腎障害に対する新規予防法として臨床第I相試験を計画。切除不能・再発胃癌症例に対するshort hydration法に5-ALA/SFC(5-アミノレブリン酸リン酸/クエン酸第一鉄ナトリウム)を加え、腎機能障害予防とQOLの面で新たな癌薬物療法のレジメン確立を目指す。S16川 崎 医 学 会 誌

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