医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-98:分娩時の母体における不感蒸泄量に関する検討(オキシトシンの影響も含めて)研究代表者:冨松 拓治(産婦人科学1)(背景)分娩中の適切な水分管理は母児の予後にとって非常に大きな役割を示すことが認められているにもかかわらず、分娩中の不感蒸泄に関する報告はなく、分娩中の適切な輸液量についての検討はほとんどなされていない。分娩中の適切な輸液は帝王切開や遷延分娩の減少、また胎児低酸素症の予防に寄与する可能性があると考えられている。(方法) 陣痛発来での入院時、および誘発分娩でのオキシトシン開始時に尿を10ml採取し、絶飲食としたのち、輸液ルートを確保し当院では時間80-120mlで細胞外液を点滴する。子宮口が開大し、分娩室に移動した際に、分娩台の上で膀胱を空虚にするために導尿を行っており、この際に尿を10ml採取する。これらの2点にわたって採取した尿の比重、浸透圧を測定(岡山医学検査センターに依頼)し、その変化を見ることによって、入院時から分娩時までの輸液の量が適切であったかどうかを判定する。(結果)29名の分娩について検討を行った。平均輸液量は110ml/hであった。尿比重の変化は+0.0010/hで、尿浸透圧の変化は+29.6mOsm/L/hであった。つまり平均的な10時間の分娩時間を考えると、110ml/hの輸液のみでは、分娩中に尿比重は0.01増加し、尿浸透圧は296 mOsm/L増加することが予測された。(考察)分娩中の不感蒸泄量を補うためには、110ml/hの輸液量では不足していることが推測された。しかし、今回の検討では個人差も多く、適切な輸液量の推定のためにはさらなる研究の継続が必要と考えられた。25基-17:乳腺アポクリン病変での遺伝子変異解析による新たな診断法の開発研究代表者:鹿股 直樹(病理学2) 乳腺乳管内病変の病理診断については、近年、高分子量サイトケラチン(CK5/6あるいはCK14など)やエストロゲン受容体の免疫染色が有効であることがわかってきた。しかし、いわゆる平坦型病変とともに、乳管内アポクリン病変の診断は、未だ免疫染色等で有効な手段が見いだされておらず、針生検時には診断確定な困難なことが少なくない。また乳腺病理のエキスパート間でも診断の一致が得られないことがしばしばある。このため、乳管内アポクリン病変の診断に有用な方法を新たに開発する必要がある。そこで今回は、良性・悪性のアポクリン病変を、シーケノム社のMassARRAY multiplex, OncoCarta Panel v2.0を用いて解析した(18遺伝子の合計152ヶ所について検索を施行)。少なくとも50%以上の領域でアポクリン化生を示す乳管内乳頭腫8例、乳管腺腫2例、アポクリン腺症1例、非浸潤性アポクリン癌3例、浸潤性アポクリン癌15例を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋標本から薄切標本を作製し、DNAを抽出しmultiplex PCRを施行した。その結果、乳頭腫症例の3例でAKT1遺伝子変異、1例のPIK3CAの変異が検出された。非浸潤性アポクリン癌では1例でFBX4の遺伝子変異がみられた。アポクリン浸潤癌では、3例でPIK3CAの変異があり、そのうちの1例はTP53変異も同時に検出された。S79

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