医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-14:妊産婦における五感とくに嗅覚を介したストレス軽減効果についての検討研究代表者:下屋 浩一郎(産婦人科学1)緒言:妊産婦における五感とくに嗅覚を介したストレス軽減効果についての検討する目的でアロマオイル吸引による妊産婦に対するストレス軽減効果を検証した。対象と方法:当院および協力施設で妊娠分娩管理を行った妊産婦を対象とし、患者背景の問診、GHQ-28とZung SDSによる精神的ストレス定量化を行い、3種類の精油より妊婦の選択した1種類を吸引させ、前後で唾液採取とストレスマーカーの測定、VASによる評価を行った。アロマの吸引はいずれかの精油を試験管チューブ内に入れ、吸引を行った。結果:妊婦36名と褥婦19名が参加し、解析可能であった妊婦21名と褥婦8名について解析した。対象の妊婦と褥婦の平均年齢はそれぞれ33.0歳、32.0歳であり、妊婦の12名、褥婦の5名が初産婦であった。妊婦の検体採取時期は平均29.0±2.8週。児の出生体重は妊婦群が平均3110g、褥婦群が3194gであった。GHQ-28にて比較的強いストレスが示された。アロマの吸引前後のVASは妊婦で4.7±1.4から2.7±1.3、褥婦で5.0±1.8から3.0±1.9と有意に自覚的ストレス量が減少した。唾液中クロモグラニンアとアミラーゼは変化がなかったが、コルチゾールは吸引後約20%有意に減少した。考察:アロマ吸引によって妊産婦の唾液中のコルチゾールを低下し、嗅覚を介したストレス軽減効果が確認され、臨床応用の可能性が示された。25基-85:マウス妊娠初期の母体免疫寛容に関する基礎的研究研究代表者:大山 文男(生化学) 妊娠中の母体は、一時的に免疫寛容状態を維持していると考えられている。従って免疫抑制がうまく制御できない場合、流産につながる。この免疫抑制の機構は長らく不明であったが、近年、マウスの実験からトリプトファン(以下Trp)分解酵素の一種であるindoleamine 2, 3-dioxygenase (IDO)が免疫抑制に関与するという報告がなされた(1998年Munnら)。その抑制機構に関して種々の仮説が提唱されているが十分説明されていない。我々は子宮内でのTrp分解酵素の発現が免疫寛容を引き起こしているとの仮説のもとに、マウスの胚・胎盤でのTrp分解活性を経時的に観察したところ、その活性は受精後5.5日に初めて検出され、6.5日にピークとなり、その後漸減した(Suzuki et al., 2001)。しかし免疫抑制に関与すると言われているIDOタンパク発現レベルは8.5日以降で、10.5~12.5日頃にようやくピークとなった。この酵素活性とタンパク質の出現時期のずれの原因を検討し、着床直後のTrp分解活性がIDOではなく、それまで肝臓にのみ発現するとされてきたTrp酸素添加酵素(TDO)によるものである可能性を示したが、その発現部位は未確定であった。そこで我々はTDO、およびIDOノックアウトマウスを使用し、受精後7.5日および10.5日の胎仔のTrp分解活性を測定するとともにTDO、IDOの発現を組織免疫学的に観察し、7.5日のTrp分解活性は野生型およびIDO-KOでは活性があるが、TDO-KOマウスでは完全に活性が消失すること。またTDOの発現細胞は子宮筋肉層の内層の脱落膜に胎仔を取り囲むように存在していることを認めた。以上の結果から、マウス妊娠初期の着床確立期にはTrp分解酵素はIDOではなくTDOとして発現していることが示唆された。S78川 崎 医 学 会 誌

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