医学会誌 第40巻 補遺号
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25大-1:膵癌進展におけるFibroblast activation protein-αの関与に関する検討研究代表者:日野 啓輔、河瀬 智哉(肝胆膵内科学)【背景】通常型膵癌(以下膵癌)は最も予後不良な固形癌のひとつで、その背景病変は高度の線維化である。Cancer associated fibroblast(CAF)に発現するfibroblast activation protein-α(FAP-α)が微小環境における免疫抑制など、癌細胞の発育に有利な環境を形成する事が明らかにされているがこれらの現象はマウスで確認されているにすぎずヒトの膵癌では確立されていない。今回我々はヒト膵癌細胞株ならびに、予め作成したFAPα陽性NIH/3T3との供培養で癌細胞増殖の検討を試みたため報告する。【方法】培養細胞でのRT-PCRの検討でNIH/3T3はFAPαを発現せず、BxPC3やMiaPaCaがFAPαを発現する事が判明している。そのためMiaPaCaから抽出したcDNAを3T3にトランスフェクトしFAPα陽性NIH/3T3のStable cell lineを樹立した。この樹立したFAPα陽性NIH/3T3やFAPα陰性NIH/3T3をMiaPaCaやBxPC3と供培養(Travigen Cilture coat 24 well)させ、癌細胞数を測定した。【結果】供培養後の癌細胞数の中央値はBxPc3にて(FAP陽性3T3との供培養 vs FAP陰性3T3との供培養)が(64.7 vs 39.6 p<0.003)、MiaPaCaの場合(FAP陽性3T3との供培養 vs FAP陰性3T3との供培養)が(74.5 vs 41.6 p<0.003)であった。【結語】NIH/3T3がFAPαを発現することで癌細胞の増殖を増強させている事が確認出来、膵癌が発育するために有利な微小環境の一因子である事が判明した。25大-4:非小細胞肺癌におけるCOX-2遺伝子多型の研究研究代表者:中田 昌男、湯川 拓郎(呼吸器外科学)背景:非小細胞肺癌(NSCLC)においてcyclooxygenase-2(COX-2)の過剰発現は予後不良因子であると報告されている。我々は以前にNSCLCにおけるCOX-2発現が抑制型T細胞(Treg)の発現と関連し、Treg発現が予後因子であることを報告した。一方、近年単一遺伝子多型(SNP)の研究が進み、切除不能NSCLCについてはCOX-2の-1195G/AのSNPで予後に差があるとの報告がある。しかしCOX-2のSNPがCOX-2の機能に及ぼす影響は十分に検討されていない。目的:肺癌切除例のCOX-2のSNPを検索し、Tregや他の腫瘍増殖因子発現との関連を明らかにする。対象と方法:当科において2011年8月から2013年5月までに手術を施行したNSCLCのうち文書にて同意が得られた80例を対象とした。末梢血よりDNAを抽出し、PCRにて遺伝子を増幅し5種類のSNPを確認し、また切除標本のパラフィン切片を用いてCOX-2、Treg、VEGF、Ki-67の免疫染色を行った。結果:平均年齢は70歳、男性50例、組織型は腺癌61例、扁平上皮癌17例、その他2例。SNPとCOX-2発現との間には関連は認めなかったが、SNPとTregスコアとの関連では-1195G/A多型において、AA群のTregスコアがGA/GG群に比べ有意に高値であった。COX-2の陽性・陰性別にTregスコアをみると、COX-2陽性群、陰性群いずれにおいても-1195G/A多型のAA群がGA/GG群より有意に高値であった。有意差は認めなかったが術後無病生存期間はAA群において短縮する傾向がみられた。結論:COX-2の-1195G/AはCOX-2発現には影響しないもののTreg発現に影響する可能性が示唆された。S76川 崎 医 学 会 誌

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