医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-83:関節炎マウスの骨破壊における骨代謝制御因子SH3BP2の関与研究代表者:守田 吉孝(リウマチ・膠原病学)【目的】関節リウマチでは、生物学的製剤投与にて過剰な炎症性サイトカインを制御してもなお関節破壊が進行していく患者が存在し、免疫系制御とは独立し、遺伝的に制御された破骨細胞分化・活性化メカニズムが、治療抵抗性の骨破壊進行に関与している可能性も考えられる。チロシンキナーゼに結合するアダプター蛋白質であるSH3BP2は、そのアミノ酸変異が炎症性顎骨破壊を特徴とする遺伝性疾患チェルビズムの原因であることが明らかとなり、骨代謝を制御する蛋白として注目されている。本研究ではSH3BP2チェルビズム変異knock-in (SH3BP2-KI)マウスを用い、コラーゲン誘導関節炎(CIA)におけるSH2BP2の役割を検討した。【方法と結果】SH3BP2-KIマウスをII型コラーゲン(CII)で免疫し関節炎を誘導したところ、コントロールマウスと比較して関節炎の程度は増強し、破骨細胞数の増加に伴って骨破壊の増悪がみられた。In vitroの解析では、骨髄由来マクロファージのTNFα産生とRANKL依存性の破骨細胞分化能がSH3BP2-KIマウスにて亢進していた。抗原依存性のリンパ球の増殖能やIL-17、IFNγの産生は、SH3BP2-KIマウスとコントロールで有意な違いはなく、血清中の抗CII抗体濃度もかわりなかった。【結論】SH3BP2はマクロファージ活性化と破骨細胞分化能の亢進を介し、CIAマウスの関節炎と骨破壊に重要な役割を果たしている。SH3BP2は関節リウマチ治療において有望な治療標的となるかもしれない。25基-72:関節炎による血管内皮機能障害に対するアンジオテンシン受容体拮抗薬の効果検討研究代表者:作田 建夫(リウマチ・膠原病学) 関節リウマチ患者は一般人と比べ心血管疾患による死亡のリスクが高く、病因として全身性の炎症が重要な役割を果たしている。活動性の高い関節リウマチ患者では早期から動脈硬化の初期病変である血管内皮機能障害が生じており注目されている。このような臨床的背景のもと、その病態機序解明のため、以前に我々は関節リウマチの動物モデルであるアジュバント関節炎ラットモデルを用いてその解析を行った。その結果、ラットのアジュバント関節炎モデルでは大動脈の内皮機能が強く障害され、動脈壁のNAD(P)H oxidase活性亢進とeNOSのuncouplingによって酸化ストレスが亢進していることを明らかにした。さらに、心血管疾患の病態に深く関与しているレニン・アンジオテンシン系が関節炎モデルラットの血管局所で活性化しており、アンジオテンシン受容体拮抗薬は関節炎ラットモデルに対して血管保護的に働いた。次の検討課題として、高血圧を合併した関節リウマチ患者を対象として降圧薬をカルシウム拮抗薬からアンジオテンシン受容体拮抗薬に変更して、血圧を同等にコントロールした上で降圧薬変更前後における血管内皮機能を測定し、アンジオテンシン受容体拮抗薬による内皮機能改善効果を検討する事とした。高血圧合併関節リウマチ患者においても血管内皮機能障害をきたしていると考えられるが、降圧薬の種類によって血管内皮機能障害の程度に差が生じるかどうかについて数症例の知見を得たので報告する。S73

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