医学会誌 第40巻 補遺号
76/92

25基-88:Mycoplasma fermentansの異所性感染を起因とする関節炎発症機構の解析研究代表者:矢作 綾野(免疫学) IL-6ファミリーサイトカインの受容体gp130に点変異を導入したノックインマウスgp130F759は関節リウマチ(RA)様の自己免疫性関節炎を自然発症する。我々は平成23年度プロジェクト研究において、C57BL/6 (B6). gp130F759にRA発症との関連性が報告されているMycoplasma fermentans (Mf) を感染させると非感染群に比べ関節炎発症が早期化することを報告した。今回、Mf感染によって促進された関節炎の病態に関して、組織、免疫系細胞、サイトカイン遺伝子発現の変化について検討した。 B6.gp130F759にMfを尾静脈から感染させ、1ヶ月後の後肢関節について、組織学的所見と炎症性サイトカインの遺伝子発現を定量的PCR法により解析した。膝関節滑膜はコラゲナーゼ処理後、細胞画分をフローサイトメトリー解析した。 Mf感染群では後肢関節滑膜表層細胞の増生が増強した。gp130F759の関節における炎症性サイトカイン遺伝子発現の解析では、非感染時に野生型の約4倍に増加していたIL-6遺伝子の発現量はMf感染により半減した。TNFα, IL-1βの発現量は非感染時に増加なく、感染によっても変動しなかった。滑膜の細胞画分は感染群で総細胞数、好中球、B細胞の増加を認めた。Mf感染は免疫系細胞増加、IL-6の発現変化を伴って滑膜組織の増生もたらすことがわかった。25基-68: 関節リウマチ由来滑膜線維芽細胞株における1型および2型TNFレセプターからのシグナルクロストークが細胞機能に与える影響について研究代表者:五十嵐 英哉(免疫学) Episomal型哺乳動物細胞発現ベクターpEBmulti-Hygに2型TNFレセプター(TNFR2)の全長cDNAをクローニングし、TNFR2低発現の関節リウマチ由来ヒト滑膜線維芽細胞株MH7Aにリポフェクション法で遺伝子導入後、ハイグロマイシンを含む培養液で選択を行い、TNFR2過剰発現耐性形質安定細胞株を得た。この細胞株をTNFRのナチュラルリガンドであるTNFαで刺激するとアネキシンV陽性細胞の割合が増加し、アポトーシス感受性を示すことがわかった。これまでTNFR2からは、TNFR1からのTRADD-Caspase8経路を介するアポトーシスを抑制するNF-κB依存性経路が発動すると考えられていたので、TNFR2を介する1型TNFR(TNFR1)からのアポトーシスシグナル増強機構を検討する目的で、この細胞株でのshRNAベクターを用いたTNFR1ノックダウン、およびTNFR1、TNFR2それぞれのレセプターに特異的なagonistic抗体を用いてレセプター固有のシグナルを活性化することにより、アポトーシス関連分子(p53、p21、Bax、Noxa、Puma etc)の発現、細胞内シグナル伝達分子(NF-κB、MAPK etc)の活性化を指標に、TNFR2過剰発現MH7AのTNFα誘導性アポトーシス亢進メカニズムについて検討中である。S72川 崎 医 学 会 誌

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です