医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-46:赤血球膜蛋白異常症における溶血性貧血に関与する因子の解明研究代表者:末盛 晋一郎(検査診断学(病態解析)) 赤血球膜蛋白異常症では、膜蛋白異常のため膜構造が破綻することで赤血球形態が変化する。形態変化をきたした赤血球は変形能が低下することにより脾臓で滞留し、通常よりも早期にマクロファージに貪食される。その結果、赤血球破壊が亢進することになり赤血球寿命が短縮する。さらに赤血球破壊亢進が骨髄での赤血球造血量を上回った場合には貧血を呈する (溶血性貧血)。これまでの解析の結果、共通の膜蛋白異常を有する赤血球膜蛋白異常症症例間において溶血性貧血の程度に差があることが判明している。この現象の原因については、膜蛋白異常の相違以外に溶血性貧血の程度を左右する機序が存在することが考えられるが、その機序については未だ未解明である。本研究では「脾臓でのマクロファージによる赤血球貪食」の観点において、「マクロファージによる赤血球貪食の際に影響を与えることが予想される因子」として貪食の際に標的の一つになると考えられるCD47に着目し、赤血球における発現量をflow cytometryを用いて解析した。今回、赤血球膜蛋白異常症とそれ以外の貧血症例の赤血球CD47発現量を解析し、赤血球膜蛋白異常症でみられる溶血性貧血と赤血球CD47発現量との関連を評価したので報告する。25基-78:「脳腫瘍の臨床像」を呈する脱髄疾患と脳悪性リンパ腫の病理学的検討研究代表者:西村 広健(病理学1) 近年,MRI等の画像検査による中枢神経系疾患の精度は高くなってきているが,時に非腫瘍性疾患でありながら,その画像所見を含めて「脳腫瘍の臨床像」を呈することがあり,その場合には臨床診断が非常に困難で,生検による病理診断がなされる。 「脳腫瘍の臨床像」を呈する非腫瘍性疾患の原因は,感染症,脱髄疾患,脳血管障害(脳出血・脳アミロイドアンギオパチー),変性疾患など多岐にわたる。また腫瘍性疾患である脳悪性リンパ腫においては,先行病変として脱髄性腫瘤の病像を示すことも知られており(sentinel lesion),その病態は複雑で,診断に苦慮することが多い。従来,脳悪性リンパ腫の診断には,腫瘍か否かのみが検索の対象であったが,本研究では腫瘍のみに注目するのではなく,脳悪性リンパ腫の背景病変を明らかにすることで,臨床・病理学的に特に問題となる脱髄疾患との鑑別についてアプローチする。自験例のsentinel lesionでは初回生検にて明瞭な脱髄像が確認されている。またリンパ腫病変内においても,脱髄を中心とする非腫瘍性疾患の背景病変を呈する症例が確認される。 本研究により,1)両者の病理学的特徴,診断のクルー・ピットフォール等を明らかにし,2)診断への的確なアプローチ方法・診断方法論を見出すことで,現状では多くの施設で診断困難であるこのような疾患の診断レベルの向上に寄与したい。S70川 崎 医 学 会 誌

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