医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-19:骨髄異形成症候群におけるDNAメチル化阻害剤の作用機序の解明-細胞株を用いた検討研究代表者:辻岡 貴之(検査診断学(病態解析))目的:DNAメチル化阻害剤は骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬として,近年注目されているが,作用機序に不明な点が多いためin vitroの系を用いて検討した。材料と方法:MDS細胞株MDS-L,MDS92と白血病細胞株HL-60を37℃,CO2 5%の条件下で培養した。DNAメチル化阻害剤(decitabine;DAC,azacitidine: AZA)を1nM-10 microMで連日処理した。結果:3つの細胞株に対して増殖抑制がみられ(DAC: IC50はMDS-L: 16.0±0.49nM, MDS92: 74.3±12.6nM, HL-60: 145.0±6.1nM),アポトーシスによる細胞死が確認された。細胞周期の解析では,MDS-LをDACで処理したとき,濃度依存性にG2/M期の細胞が増加した。一方形態上,分裂期細胞の増加を認めなかった。ヒストンH2AXのリン酸化がDACによって増強された。DAC20nMで最もメチル化が抑制された。DNAマイクロアレイを用いた遺伝子解析では造血系,細胞死に関係する遺伝子群が上位にランクされた。考察:DACはG2期あるいは増殖抑制に関与する遺伝子に作用していることが示唆された。今後,DACにより発現が上昇し,かつ脱メチル化される遺伝子に注目しMDSの病態との関連性について検討していきたい。25基-40:先天性赤血球膜異常症の病因解明と簡易診断法の確立に向けて研究代表者:杉原 尚(血液内科学)【緒言】遺伝性球状赤血球症(HS)は赤血球膜蛋白異常(spectrin、ankyrin、band 3、P4.2)に起因する疾患であるが、従来の赤血球膜蛋白検査(SDS-PAGE)では必ずしも病因遺伝子変異に該当する膜蛋白異常を表現しておらず、約30%の症例で膜蛋白異常を同定できない。我々はHSの新たな検査法として、赤血球膜EMA結合能をフローサイトメトリーで評価する方法に注目し、同検査の有用性を検討した。【対象】HS80例(spectrin単独欠損8例、ankyrin関連欠損6例、band 3関連欠損18例、P4.2部分欠損20例、膜蛋白欠損未検出群23例)、P4.2完全欠損症5例、HE14例(P4.1欠損5例、spectrin欠損4例、膜蛋白欠損未検出群5例)【結果】MCF (% of control)値は、spectrin欠損79.1±5.9%、ankyrin欠損74.8±3.2%、band 3欠損72.8±5.5%、P4.2部分欠損77.7±7.7%、膜蛋白欠損未検出群73.7±6.7%、P4.2完全欠損86.3±2.6%といずれも低値であった。これに対して、HE14症例では多くの症例で正常範囲であったが、spectrin欠損2例は低値を示した。【考察】EMA結合能はHS全病型において低下しており、HSにおける診断法として有用である。HEも含めて更なる症例の蓄積による検討を要する。S69

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