医学会誌 第40巻 補遺号
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25基-38: 香港型インフルエンザウイルス(A/H3N2)ヘムアグルチニンへの糖鎖付加がウイルスの病原性および抗原性に及ぼす影響の解析研究代表者:後川 潤(微生物学) インフルエンザが毎年流行する要因の一つがA型ウイルスにおけるヘムアグルチニン(hemagglutinin:HA)の抗原変異であり、特にアミノ酸変異によるHA頭部への糖鎖の付加は宿主免疫から免れるために有効と考えられている。1968年に出現した香港型ウイルスは、2009年のブタ由来パンデミックウイルス出現によって2009-10および2010-11シーズンにはほとんど流行がなく、ソ連型ウイルスのように消滅するかと思われたが、2011-12と2012-13の2シーズンではパンデミック型を抑えて大流行している。この現象が起こった要因の一つとして、糖鎖付加をともなうHAの抗原変異が考えられる。本研究では① 2010-11および2011-12の2シーズンに分離されたウイルス株を用いてHAのアミノ酸変異と抗血清に対する中和反応性について ② データベースに登録されているウイルス塩基配列を用いてHAの変異と香港型ウイルスの流行についてそれぞれ関連を検証した。その結果、2シーズン間にHA頭部(K144N)及び幹部(S45N)のアミノ酸置換が段階的に起こり糖鎖付加を伴う抗原変異が起きていること、特にK144N置換は抗血清に対する中和反応性を著しく変化させることを見い出した。さらに、データベース解析からは、糖鎖の付加だけでなく欠失も香港型ウイルス再流行の戦略である可能性が示唆された。25基-97:小児でのインフルエンザ感染症でのその他のウイルスの重複感染についての研究研究代表者:織田 慶子(小児科学)方法 インフルエンザ感染患児に時に2峰性の発熱を認めるが、ウイルス学的に検討したものはない。今回我々はインフルエンザ感染症と診断された小児患者で、2峰性発熱を示したものに何らかの呼吸器系ウイルスの重複感染があるのか検討した。 ウイルス分離は国立仙台医療センターウイルスセンターにお願いし、当院でPCRの検討を行った。結果 2峰性発熱をきたした患者は8名、2峰性発熱をきたさなかった患児は9名であった。2峰性発熱を示した患児ではインフルエンザB型が発症4日目まで4名認めていて、多い傾向にあったが、この症例数では有意な差を認めるに至らなかった。結語 インフルエンザB型が発症4日まで分離された症例に2峰性発熱を示す傾向が示されたが、今後の検討が必要である。S65

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