医学会誌 第40巻 補遺号
66/92

25基-2:肺炎クラミジアはいかにして宿主細胞を生存させ続けるのか?研究代表者:築取 いずみ(分子生物学2(遺伝学)) 真核生物の細胞内でのみ増殖が可能な偏性細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジアは、宿主細胞内で生存・増殖を行うために、宿主細胞のアポトーシスを制御していることが強く示唆されている。しかし、宿主アポトーシス制御機構には不明な点が多く、現在までにアポトーシス制御分子として報告されている肺炎クラミジアタンパク質はchlamydial protease-like activity factor (CPAF)ひとつのみである。 これまで、申請者の研究室では、酵母に機能未知肺炎クラミジア分子を発現させ、その表現型により、肺炎クラミジアエフェクター分子の探索を行ってきた。酵母に肺炎クラミジア分子を発現させたところ、62個の肺炎クラミジア分子が酵母に対して増殖抑制を引き起こした。これら62個の分子を、増殖抑制の強度の差により5段階に分類すると、最も強く、もしくは二番目に強く、酵母の増殖を抑制する分子が32個あることがわかった。この32個の中、さらに検討を行った結果、酵母にアポトーシスを引き起こすことで、増殖抑制を引き起こしている分子を見出すことに成功した。これらの分子は、肺炎クラミジア感染後期に作用し、宿主細胞内で十分に増殖後、他の細胞へと感染を拡大する際に重要な役割を担っていることが考えられる。今後はこれらの作用機序について明らかにしていく。25ス-4:宿主細胞内輸送システム障害による肺炎クラミジア感染戦略機構の解明研究代表者:安井 ゆみこ(分子生物学2(遺伝学)) 偏性細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジアは、III型分泌装置により宿主細胞にエフェクター分子を注入し、宿主細胞の生体防御機構から逃れて感染を持続している。その機構の1つとして、肺炎クラミジアが宿主細胞内小胞輸送システムを攪乱し、ファゴソーム・リソソーム融合による異物分解機構から逃れていると推測される。そこで本研究では、細胞内輸送機構に異常を起こすエフェクター分子の探索を行った。 酵母発現ベクターpYY010に肺炎クラミジア機能未知遺伝子455個の組換えを行い、インベルターゼ・カルボキシペプチターゼY(Inv-CpY)融合タンパク質発現酵母に形質転換した。この酵母において通常ではInv-CpYはヒトのリソソームに相当する液胞に輸送されるが、細胞内輸送機構に異常が生じるとInv-CpYが細胞外に分泌される。肺炎クラミジアタンパク質を発現させた際の細胞外のInv活性を測定し、宿主細胞における細胞内輸送機構異常を起こす肺炎クラミジア分子を網羅的に探索した。 その結果、Incタンパク質などを含む15個の分子を発現させた際、細胞外のInv活性が陽性になることを明らかにした。その中で、クラミジア属を含めて機能解析がなされていない分子に注目し、①特異的抗体作製、②Yeast-two-hybrid法、GST-Pull down法による宿主の結合分子の同定などを行い、この分子の機能解析をすすめている。S62川 崎 医 学 会 誌

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です